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20年に及ぶ農業協力関係をさらに深める 豪州連邦政府のトラス農相と中国の杜青林農相(Du Qinglin Minister of Agriculture) は9月4日北京で会談し、同日、結果内容を共同発表した。 発表の主な内容は、@農産物貿易を含む農業に関連した幅広い分野で両国間の協 力関係を強化すること、A両国間の農産物市場へのアクセスの障害となる技術的問 題点を、国際協定に合致した形で解決へ向け検討していくこと。また、この検討に 際して、その実施の時期や手法が最も効果的なものになるよう配慮すること、B両 国間に存在する農業問題について、相互理解を深めるため、従来から実施している 高級官僚レベルでの協議に加え、閣僚レベルでも定期的に会議を開催すること−と なっている。 両首脳は、これまでの農業分野での協力関係の強化には、1984年に締結された農 業協力協定(ACACA)による相互交流が両国間に多岐にわたって存在する農業 問題の相互理解に大きく貢献しているとの認識で一致した。 また、1984年以来行われている共同科学研究事業については、これまで研究目的 を生産性の向上、穀物や家畜の改良などとしていたが、今回の会談で、今後は農業 生産を維持するための、水、土壌や森林資源の管理などを加えることとした。 WTO交渉で両国は協力関係に 農産物貿易問題については、現在行われている世界貿易機関(WTO)農業交渉 に言及し、ケアンズグループと中国のポジションは類似しているとし、両首脳は、 「有意義で継続的な貿易改革を達成するためにWTO農業交渉の場で協力していく ことは両国にとって利益がある」と述べ、今後の交渉の中で相互に協力していく姿 勢を見せた。 SPS協定締結への作業部会設置 一方、報道によると、トラス農相は4日、中国の検疫担当相と会談し、両国間で 政府高官レベルでの検疫問題に関する作業部会を立ち上げることに合意したと述べ た。作業部会では、両国間の動植物検疫に関する問題を広く検討し、中国との衛生 植物検疫(SPS)協定締結に向けた作業を行っていくとしている。 豪州と中国間の農産物貿易のうち食肉については、今年6月輸入規則改正交渉が 終結し、豪州産牛肉、羊肉、ヤギ肉の輸入は小売市場向け加工用原料用などに限る としていた中国側の輸入規制が事実上撤廃され(海外駐在員情報通巻第585号参照) 、現在、両国では実際の貿易に向けた準備作業に入っている。しかし、最近まで、 畜産物を含む豪州産農産物は、香港経由の違法ルートで中国に輸出されるものが多 かったと言われている。トラス農相は今回の作業部会の設置で、将来「中国向け農 産物輸出が、迅速に行われることになる」と述べている。 重要度を増す豪・中国間貿易 豪州と中国間の貿易量は、近年着実に増加しており、豪州貿易促進庁では中国が 将来最大の貿易相手国となるとの見方もある。また、8月初め両国間でFTA締結 へ向けた勉強会を始めることに合意したとの報道もある。さらに、9月に入って、 中国との合弁会社を設立しているチャレンジ乳業協同組合(西オーストラリア州) が、中国へのチーズ輸出を開始するなど、豪州にとって中国との貿易関係が重要度 を増してきている。 ◎ ボンラック、フォンテラによる再建案の採用を正式決定 ビクトリア州の大手乳業会社ボンラックフーズは、9月5日に開かれた同社への 生乳供給元酪農組合で同社の株式の75%を所有するボンラック・サプライ・カンパ ニーの株主総会において、フォンテラが提示した再建案を9割以上の賛成を得て可 決し、フォンテラ案で再建を図ることが正式に決定した。これにより、フォンテラ の株式所有率は現在の25%から50%になるとともに、ボンラックの乳製品すべてを フォンテラが買い取り、ボンラックの事業は集乳、生乳加工処理に集約されること となった。 【シドニー駐在員 井上 敦司 9月11日発】
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