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水害により2003年の生乳生産も減産見込み アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)によると、同国の2002年の生乳 生産量は、前年比10.0%減の852万9千キロリットルとなり、90年代半ばの水準 まで落ち込んだ。この減少要因としては、乳価低迷に伴う収益性の悪化を嫌い酪 農家の廃業が増加したこと、乳牛のとう汰頭数が増大したこと、酪農から耕種へ の転換が進んだことなどがある。さらに、2003年は、同国の主要酪農地帯である サンタフェ州を中心とした水害の影響などから、前年比8.5%減の780万キロリッ トルと4年連続の減少が見込まれている。なお、2003年1〜7月における主要乳 業メーカーの生乳取扱数量(全国の生産量の約60〜65%を占める。)は、前年同 期比 14.2%減の 229万8千キロリットルとなった。また、2004年の生乳生産は、 今後の乳価の推移などにもよるが、やや回復すると見込まれる。しかし、99年の 水準まで回復するには、5〜7年を要するとしている。 経済危機で2002年以降、国内消費が冷え込む 生乳生産量が減少する中、2003年1〜7月の牛乳・乳製品の輸出量は、前年同 期比35.7%減の7万6千トン(製品重量ベース)となった。最大の輸出相手先で あるブラジル向けは、71.4%減の1万7千トンと激減した。この要因としては、 アルゼンチンの生乳生産量の減少に加え、こうした減少に伴い乳価が上昇し、輸 出価格が上昇したことなどが挙げられる。 また、2002年の1人1年当たりの牛乳・乳製品の消費量(生乳換算ベース)は、 経済危機の影響で前年比 19.3%減の181リットルとなった。これは、90年代の水 準である220〜230リットルを大きく下回っている。さらに、2003年1〜7月の消 費量は、前年同期比14%減となった。SAGPyAでは、失業率や賃金水準など が回復すれば、消費は上向くとみているが、2001年以前の水準に急速に回復する ことは、期待できないとしている。もし、急速に消費が回復した場合は、91年の 兌換法導入後の需要増加により、国内生産が国内需要を満たすことができずに不 足分を輸入に依存した90年代初めと似通った状況になる可能性があるとしている。 なお、91〜92年は、生乳換算ベースで、需要量の約1割を輸入に依存した。 酪農乳業の回復に向けた課題について提言 こうした中、SAGPyAは、酪農・乳業部門の回復に向けた課題について、 以下を提言した。 @ 生産地域における酪農・乳業情勢の適切な分析を可能とするために、統計 情報システムを確立する。 A 公衆衛生の向上などを図るため、国と州の関係機関の調整により、食品の 衛生および流通に関する管理体制を強化する。 B 牛乳・乳製品の取引数量を偽るなどの脱税行為を抑制するため、税制の見 直しを行う。また、牛乳・乳製品の取引を可能な限り透明化する。 C 各生産地域における酪農・乳業の振興を図るため、道路インフラを整備す る。 D 経営基盤のぜい弱な中小規模の酪農家を支援する。 E 製品の品質向上を図るため、中小乳業メーカーが行う研修活動などを支援 する。 F 市場アクセスの拡大などを図るため、国際フォーラムにおいて積極的な発 言を行う。 今年5月には、酪農家、乳業メーカー、主要酪農生産州の各政府、およびSA GPyAのそれぞれの代表者から構成される国家酪農乳業政策協議会が結成され、 関係者が協力して、酪農・乳業部門の問題解決に当たることが確認されたが、こ の協議会を中心として関係者がSAGPyAの掲げる課題にいかに取り組むかそ の動向が注目される。 【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 9月12日発】
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