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肉用牛の輸出入状況
インドネシアでは、供給不足分の牛肉を確保するために生体牛を輸入し、一定期 間肥育するフィードロット産業が発達している。そして肉用牛の輸入の大部分を口 蹄疫(FMD)清浄国であり、同国での飼養に適した品種が飼養されている豪州に依存 してきた。同国の2002年の肉用牛輸入頭数は、豪州の干ばつの影響による飼料不足 からかなりの程度増加した。また、近年、エジプトを始め中東地域において豪州産 肉牛の需要が高まりつつあったが、イラク戦争のため周辺地域の需要が減少したこ とも、同国の輸入が増えた要因の1つである。 現在、豪州の生体牛輸出頭数は全体で90万頭、うちインドネシア向けが30〜40万 頭、フィリピン、エジプトがそれぞれ20万頭、残りはブルネイ、マレーシアや中東 各国等向けとなっている。なお、インドネシアは昨年来西ヌサテンガラ州のバリ牛 純粋種繁殖雌牛の輸出を小規模ながら行っている。マレーシアに対し、1頭当たり2 百万ルピア(2万8千円:1ルピア=0.014円)程度で販売されている。 生体牛の輸入増加により価格は低水準で推移 同国の生体牛価格および牛肉価格は、豪州からの肥育素牛など生体牛の増加によ り低水準で推移している。 西ジャワ州では8月中旬の生体取引価格が、2カ月前の1キログラム1万4,500 ルピア(203円)に比べ同1万1千ルピア(154円)にまで下落した。1万4千ルピア(196 円)以下では肥育牛の生産コストは原価割れであるとしている。 この原因として、同国農業省畜産総局のプレスリリースなどでは不正輸入の影響 が強調されているが、実際は肉用牛の輸入頭数の増加やその他に為替レートの変動 や購買力の低下が挙げられ、このような各種の要因が積み重なって国内肉牛産業へ の影響が現れている。 不正輸入対策 他の畜産品と偽ったり、工業原料と称し実際には食用仕向けとするなどの不正輸 入問題は深刻である。これらの多くはインドからマレーシアを経由し公共交通機関 や海路から輸入されているとされている。 FMDおよびBSE清浄国である同国にとって、非清浄国からの不正輸入は将来の輸出 振興の可能性を奪うのみならず家畜や人体に対する悪影響も大きいとして、政府は、 まずは消費者保護対策として2003年11月から、輸入畜産品に対するインドネシア語 表記を義務付けると発表している。ただし、今後の抜本的対策としては、不正輸入 が多いとされるスマトラ島東部やカリマンタン島南部の港湾などにおける検査体制 の適正化と強化が早急に望まれている。 肉牛生産振興上の課題 同国では、将来、安定的に牛肉を確保するためには、特定の輸出国からの供給に 依存する体質を改善し、国内肉牛生産を振興する必要性が繰り返し論じられてきた。 しかし、現実的には、低い価格水準などの影響で国内の肉牛飼養頭数は伸び悩んで おり、ジャワ島およびその周辺の肉牛飼養頭数の多い地域で散発的に生産性向上の 取組みが見られるのみである。中央政府主導による包括的かつ実効性のある取組み が期待されている。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 9月18日発】
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