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アルゼンチンの有機生産、2002年は伸び悩み


生産面積および生産量、初めて前年を下回る

 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)が公表した「2002年における
アルゼンチンの有機生産の状況」によると、生産面積は前年比6.7%減の276万2千
ヘクタール、有機農畜産物および加工製品を合計した有機製品の生産量は同1.7%
減の5万トン、輸出量は同0.2%増の4万8千トンとなっている。

  アルゼンチンの有機生産に係る統計は1998年以降が公表されているが、生産面積
および生産量が前年を下回ったのは2002年が初めてであり、また輸出量は前年を下
回らなかったものの、ほぼ横ばいであった。

  SENASAの5月の中間発表では、「追跡調査対象農場数(有機製品として認
定を受けるために調査対象として登録されている農場数)が、2001年の 1,664から
7%増え1,779となった。また牧羊業の盛んなパタゴニア地域のサンタクルス州や
チュブト州における羊の追跡調査対象頭数が大きく伸びたため、羊の同全頭数は2001
年の67万1千頭から12.4%増の75万4千頭となった」とし、2002年も有機生産の伸
びを期待する内容となっていた。


  
アルゼンチンの有機生産の傾向 

  SENASAは今回の報告書の中で、2002年の有機生産について以下のような分
析をしている。

1 有機製品はほとんどが輸出用であり、主要市場はEUである。

2 有機製品の輸出で大きく増加したのは植物性製品ではレモン(2001年の313ト
    ンから2002年の1,200トンへ。以下同じ。)、小麦(4,324トンから5,954トン
    へ)であり、動物性製品ではハチミツ(265トンから417トンへ)である。

3 農業における生産面積の減少は、穀類および油糧作物グループ(特に大豆およ
  びトウモロコシ)、工芸作物グループの減少に起因している。

4 畜産における生産面積の減少は、少数の大規模生産農家が有機畜産システムか
  ら離脱したことが主因である。

5 大豆、トウモロコシ、パン用小麦、タマネギ、洋ナシ、リンゴの6品目の輸出
  量は2001年は全体の7割を占め、その傾向は変わらず、2002年は同67%となっ
  た。しかし、大豆、トウモロコシ、リンゴの輸出量は昨年より減少している。
    


有機牛肉も苦戦

 牛の追跡調査対象頭数は、2001年が13万1,200頭であったが、2002年は6.8%減
の12万2,300頭となった。また有機牛肉の輸出量も50トンと過去最低となった。

  有機生産が減少している理由についてSENASA担当者は、詳細分析は行って
おらずあくまで想定される可能性でしかないが、

@ 2002年の経済不況により認定料等の支出を敬遠したこと、また畜産の場合は
  2001年の口蹄疫発生により牛肉等の輸出ができず収入減となり、続いて経済
  不況が重なったため認定料等の支払いが困難であったこと

A 有機製品として期待された価格や数量で販売することが難しかったこと

B @とAに関連するが、有機牛肉はEUの消費者だけが買っており、ヒルトン
  枠(価格の比較的高いEU向けの高級牛肉の関税割当枠)の牛肉価格とあま
  り大差がないため、認定料を含めてコスト的に魅力がなくなっていること

 により、わざわざ有機認定を取得する意義が減じたと判断する農家が増えたこ
とによるのではないかとしている。また、有機認定機関のOIA(Organizacion 
Internacional Agropecuaria)は、一般的に大豆およびトウモロコシの販売価
格が上昇したため、栽培の簡単な従来の生産システム(有機以外)に戻った認定
農場も存在したと話している。

 コストと販売価格といった有機生産を継続する上で問題となる点はいずこも同
じようであるが、過去において拡大の一途をたどって来たアルゼンチンの有機生
産が今後どうなるか注目される。


アルゼンチンの有機農畜産物の生産


資料:SENASA集計
注)農産物等には穀物、油糧種子、果物、野菜、工芸作物、加
 工製品などを含む。畜産物には、生体家畜、鶏卵、ハチミツ
 は含まない。各数量は製品ベース(ただし、牛乳はリットル
 を1キログラムとして換算)。



【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 9月24日発】 


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