ALIC/WEEKLY
冬穀物は史上2番目の豊作予測 豪州農業資源経済局(ABARE)は9月9日、四半期ごとに発表している最新の穀物 レポートを発表した。 今回の報告では、03/04年度の冬穀物の生産量は、7月の終わりから8月にかけて 穀物生産地域にまとまった降雨があり、作付面積が前年の2倍に増加したことから、 前回(6月)の予測を大幅に上方修正し、02/03年度の干ばつによる不作から一転し て史上2番目の豊作になると予測している。また、夏穀物の生産量についても、全体 の作付面積は増加すると見込まれるが、かんがい用水不足は悪化し、米や綿実といっ たかんがい用水に依存する穀物の生産量は、前回の予測から下方修正された。豪州小 麦輸出公社(AWB)等の穀物関連団体もほぼ同様な見方をしている。 ○ 冬穀物 03/04年度の冬穀物主要品目(小麦、大麦、カノーラ、ルーピン)の生産量は、今 後、平年並みの雨量があり、遅霜の被害に遭わなければ前年度に比べ2.4倍の約 3,400万トンと見込んでおり、平年の生産量(約3,200万トン)をかなり上回ると予 測している。 03/04年度 主要品目の生産量予測の推移(単位:千トン)
品目 | 02/03年 |
03/04年 (6月予測) |
03/04年 (9月予測) |
小麦 | 9,385 | 21,662 | 24,078 |
大麦 | 3,268 | 6,657 | 7,331 |
カノーラ | 790 | 1,274 | 1,368 |
ルーピン | 537 | 1,028 | 1,052 |
計 | 13,980 | 30,621 | 33,829 |
○ 夏穀物 これから播種時期を迎える03/04年度の夏穀物の作付面積は、ソルガムやメイズが 大幅に増加し、昨年度に比べ全体で37%増の127万ヘクタールと見込んでいる。しか し、前回報告と同様、かんがい用水不足は改善しておらず、かんがい用水に依存する 米の生産量は前年より増加が見込まれるものの、平年に比べ67%の減(平年の生産量 約135万トン)、綿実は69%の減(同約104万トン)となると見ている。 米や綿実の主産地であるニューサウスウェールズ州の現在(8月末)のかんがい用 水量は、昨年の干ばつがひどかった同時期よりも少なく、今後の降雨量によってはさ らに悪化することも予想される。
03/04年度 主要品目の生産量予測の推移(単位:千トン)
品目 | 02/03年 |
03/04年 (6月予測) |
03/04年 (9月予測) |
米 | 391 | 500 | 440 |
綿実 | 455 | 353 | 321 |
ソルガム | 1,065 | 2,048 | 2,048 |
トラス農相、干ばつは依然継続と警鐘 ABAREの報告によると、穀物価格も低下傾向にあり、今回の報告時点と6月の 報告時点で比較すると、飼料用小麦価格は17%低下しトン当たり239豪ドル(約18,400 円:1豪ドル=77円)、飼料用大麦は同様に10%低下しトン当たり263豪ドル(約20,250 円)となっている。 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)では、この報告を受けて、過去12ヵ月間、極 端な飼料穀物不足と飼料の高騰に苦しんできたフィードロット業者にとって朗報であ ると述べている。 一方、トラス農相はABAREの予測を歓迎しつつも、100年来の干ばつは依然終了 していないと次の点を指摘し、注意を促している。 ・豪州連邦政府のEC認定地域としての資格を有する農地が依然として全体の65%に 上り、特にクインズランド州の一部では深刻な干ばつの状態が続いている。 ・ほとんどの生産者は、依然として収穫期までに平均的な量の降雨を必要としており 、収穫が終わるまで生産者は安心できない。 ・家畜生産者は、家畜を早期と畜したため家畜群を再構築するための費用や値下がり してきているとはいえ依然高い飼料代などの問題を抱えている。 ・干ばつの影響により、依然としてかんがい用水不足が続いている。 なお、豪州気象庁の3ヵ月(9月〜11月)の降雨予測によると、西オーストラリア 州南西部は60%から70%の確率、その他の地域は40%から50%の確率で平均的な量が 期待できるとみている。 【シドニー駐在員 井上 敦司 9月24日発】
元のページに戻る