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飲用乳価最低保証制度復活求める 先頃、豪州の生乳生産者団体の1つである豪州生乳生産者協会(Australian Milk Producers Association;AMPA)は、乳価制度の復活と現行の乳価の値上げを求め、ニューサウスウェ ールズ(NSW)州やクインズランド(QLD)州など4つの州の連邦議員事務所前で抗議行 動を行った。AMPAは、乳価制度の撤廃に反対して2000年の規制緩和時に結成された生乳生 産者の団体である。 AMPAによると、「大手スーパーマーケットのコールズやウールワースが、牛乳を1リット ル当たり1.50ドル(120円;1豪ドル=80円)で販売した場合、生乳生産者の収入は30セント (24円)以下にとどまり、収入が生産コストを下回る結果となる」とし、この廉価販売の問題 の解決のために連邦政府や州政府が最低乳価の保証を行うよう訴えている。シドニー市内の2002 年の牛乳1リットル当たり平均販売価格は約1.48ドル(約118円)だった。 生産者乳価の制度としては、連邦政府による加工原料乳に対する価格補てん制度と各州政府 による飲用向け生乳に対する最低価格保証制度が2000年6月まで実施されていたが、それ以降 、自由化された。自由化後は、飲用向け乳価が大幅に低下した。規制緩和前の1リットル当た り飲用向け乳価は、1999/2000年度は52.3セント(約42円)であったが、規制緩和後は、2000/ 01年度;29.0セント、01/02年度;33.0セント、02/03年度;29.5セントーと大幅に低下してい る。 AMPAでは、今回の抗議行動について「今年予定される連邦選挙に向けた最初のもの」と 述べ今後も継続していくとしている。 干ばつなどの影響も抗議行動の一因 連邦政府のトラス農相は、この抗議行動を受けて声明を発表した。この声明の中で、トラス 農相はこの抗議行動の背景について述べ、その要因は規制緩和による乳価の低下のほかに@干 ばつの影響による生乳生産量の減少や飼料価格の高騰などの経費増、A乳業メーカーによる製 品販売価格競争の激化などを挙げている。 生乳生産量については、干ばつの影響により2002/03年度は前年度に比べ約8.4%減、2003/ 04年度に入っても7〜1月累計で昨年同期比5.5%減の約67億リットルと、さらに減少してい る。 同時期、飲用仕向けが比較的多い地域をみてもNSW州は1.4%減、同じくQLD州では4% 減となっている。また、2002/03年度の生乳生産者の収入は、干ばつの影響で前年度から平均 で16%減少している。さらに飼料価格の上昇やかんがい用水の経費負担増で事業損益は7万 6,000ドル(608万円)の赤字となっている。 連邦政府の支援継続も、業界自らの努力が必要 さらに、トラス農相は、規制緩和後の豪州酪農乳業界の現状について、依然として厳しい試 練に直面した状況が続いているとの認識を示した。 トラス農相は、この状況を乗り越えるための「速やかな解決手段はない」としつつも、「連 邦政府として、生乳生産者のために建設的な努力を続けていく」と述べ、連邦政府が支援して いく姿勢を示した。また一方では「豪州政府は、業界がこの変革に適応していくことが必要で あると認識している」と述べ、生乳生産者だけでなく業界全体での自助努力を促している。 連邦政府では、規制緩和に関連して、生産者の所得低下分の補てんのために、生乳生産者に 対し飲用乳への課徴金を財源とした補償金の支払いを行っている。補償期間は8年間で約19億 ドル(1,520億円)を予定しており、すでに8億5,000万ドル(680億円)を支払っている。 一方、州政府は西オーストラリア州を除き特別な支援措置を行っていない。 【シドニー駐在員 井上 敦司 平成16年4月14日発】
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