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2004年は、約9割の農家が減税対象 ベネマン農務長官は4月15日、2003年6月に成立した「雇用と成長、所得税減税調整法(2003 年減税法)」により、農家に対する2004年の所得税などの減税規模は40億ドル(4,360億円、1 ドル=109円)を超えるものになると発表した。税金の日(米国では4月15日が確定申告最終日) にちなんだイベントに参加した同長官は、「約9割の農家が、平均で年間2,000ドル(21万8,000 円)程度あるいは16%の税金の軽減など、何らかの減税措置の恩恵を受けることになる」と述 べた。昨年成立した2003年減税法は、2001年減税法を前倒しして実施することを目的に改正さ れ、10年間で総額3,500億ドル(38兆1,500億円)に上る減税措置が盛り込まれている。主な内 容は、次の通り。 所得税率の引き下げや設備投資償却枠の増額などを実施 ・所得税: @最低税率10%枠の拡大(夫婦合算申告の場合の課税所得が 12,000ドル(131万円)から 14,000ドル(153万円)、単身者の場合6,000ドル(65万円)から7,000ドル(76万円)、A 現行の累進税率の引き下げ(平均2%引き下げ)、B夫婦合算申告の改善(夫婦が共稼ぎで あることにより合算申告税額が、単身者二人の税額より大きくなる結婚による税金上の不公 平の改善)および扶養子女に対する税額控除額の引き上げ(600ドル(7万円)から1,000ド ル(11万円)の実施。これらにより全農家の平均所得税率が18%(2000年)から14%(2004 年)に減少すると想定している。 ・配当税率: 最大税率38.6%だった(株式など)配当に対する税率を15%に引き下げ(所得税率15%未満 の納税者は5%)。これにより65歳を超える農業従事者の半数以上、全体でも3分の1の農家 がこの措置の対象となっている。 ・キャピタルゲイン税率: 配当税率と同様に15%に引き下げ。多くの農家にとってキャピタルゲインは重要な収入源で あり、米国内国歳入庁(IRS)によれば40%を超える農家がキャピタルゲイン収入に対する 確定申告を行っているとしている。今回対象となる農家の配当に係る税額は平均1,200ドル (13万円)軽減されるとしている。 ・設備投資償却枠の拡大: 2006年までに限り年間設備投資に係る控除額を25,000ドル(273万円)から10万ドル(1,090 万円)へ引き上げるとともに、設備投資初年度の償却率を30%から50%へ引き上げ。2004年 はこれにより、農場における機械器具設備の90%以上がこの対象となり、全農家の98%がこ の恩恵を受けることになる。結果として、機械器具設備の新たな投資を増大させることがで きる。これにより、2004年の控除対象となる農家の施設器具設備投資額は約35億ドル(3,815 億円)に増加すると見込まれる。 ・相続・贈与税: 連邦の相続・贈与税の課税対象額が100万ドル(1億900万円)から150万ドル(1億6,350円) に引き上げ。これにより2004年は農家の相続者が支払う相続・贈与税が約12%減少するとし ている。 減税効果シミュレーションでは、最大約17千ドルの節税も 減税措置による3人または4人家族の農家における減税効果について次のとおりシミュレーショ ンをしており、 @年間所得60,000ドル(654万円)(3人家族):1,192ドル(13万円) A年間所得45,000ドル(491万円)(4人家族):1,417ドル(15万円) B年間所得45,000ドルおよび機械器具設備投資額50,000ドル(545万円) (4人家族):4,501ドル(49万円) C年間所得85,000ドル(927万円)(4人家族):3,254ドル(35万円) D年間所得85,000ドルおよび機械器具設備投資額10万ドル(1,090万円) (4人家族):3,254ドル(35万円) となり、いずれの階層においても税額が軽減されるとしている。この一方で、本年2月の大統 領予算教書では2004年度の財政赤字が5,210億ドル(56兆7,890億円)に達する見込みと発表し ており、米国政府の財政状況は厳しい状況にある。
【ワシントン駐在員 道免 昭仁 平成16年4月21日発】
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