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アルゼンチンのBSE予防対策に世界銀行が支援


 
BSEの予防対策に140万ドルを予定

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は昨年12月30日に「世界銀行は、我々
が実施する伝達性海綿状脳症(TSE)の予防プロジェクトを承認した」と発表した。
 
  このプロジェクトは、州農業支援プログラム(PROSAP)の枠組内で、約140万
ドル(約1億4,771万円、1ドル=106円)の経費をかけて実施される予定であり、
SAGPyAによればこのうち世界銀行が約8割を融資することになる。なお、実施期
間は3年を予定している。

  ちなみにPROSAPとは、州の農業振興を図ることを目的として様々な課題(イン
フラ整備、家畜疾病の予防と監視の強化、生産物の多様化および付加価値化の推
進等)に取り組んでいくSAGPyAのプログラムで、世界銀行と米州開発銀行が支援
しており、今回のプロジェクトには世界銀行が出資している資金の活用が承認さ
れた。



BSE対策の強化に向けたプロジェクト内容
 
 このプロジェクトは、農畜産品衛生事業団(SENASA)と国立農牧技術院(INTA)
が各々テーマをもって実施するスタイルをとっており、活動計画の内容は、“監
査や検査に従事することになる政府の内部関係者、生産連鎖に関連する配合飼料
工場、食肉パッカー、生産者などの外部関係者に対するBSE関連の知識や規則
の教育・普及”を実施することなどである。

○ SENASAの活動

・研究・技術管理局(DILACOT)においては、診断技術および最新知識を習得す
  ること。
  
・動物衛生局(DNSA)においては、BSEの監視方法に関する最新知識の習得、
  模擬訓練と緊急事態への対応教育をすること。
  
・食料および飼料監査局(DNFA/DFV−植物衛生関係)においては、配合飼料の交
  差汚染を回避するための処理マニュアルに関する教育やDNFA決議第13/2002号
  (反すう動物の配合飼料にほ乳類のタンパク質が検出された場合の対処ガイド)
  の適切な運用訓練をすること。

・食料および飼料監査局(DNFA/DEPOA−動物衛生関係)は、レンダリング処理の
  監査に係る規定を順守した業務を遂行するために必要な管理システムや器具機
  材の適切な利用方法を習得すること。
  
・配合飼料工場の生産部門の責任者等に対しては、交差汚染を予防するための処
  理ガイドと前述のDNFA決議第13/2002号を順守することを周知すること。

  
○ INTAの活動

・INTA専門家等による作業グループを結成すること。

・生産者全員にBSEについて知ってもらうため、配布用の視聴覚教材を作成す
  ること。なお情報を提供するだけではなく、関係者は最新のBSE情報を自ら
  入手することを積極的に実施するように教育すること。
  
・地方で発生する神経症状を呈す家畜の認識と診断に係る教育を行うため、実習
  用機材の提供(家畜、解剖用器具、防護服等)と講習会を開催すること。なお
  サンプル採取や処理・発送の訓練、定められた書式へ記入する際のデ―タ基準
  の統一化を徹底すること。

・分析能力を向上させるため、最新の技術を習得することを目的に国際機関への
  短期研修を実施すること。

・国際的な専門家を招いての“プリオン病における病理診断の進歩”と題する講
  義を開催すること。


○ その他の活動

・万が一BSEが発生した場合を想定して対応マニュアルを作成すること。

・プリオン病の研究を推進するために機械機材を購入すること。



一部に肉骨粉の製造中止を求める声

 このようなプロジェクトが発表される中、アルゼンチンで最も政治的影響力の
強い農業団体であるアルゼンチン農牧協会(SRA)の副会長は、「飼料製造工場に
おいて肉骨粉の誤った混入や間違って肉骨粉を含有する飼料を給与する可能性が
否定できず、牛への給与を完全にはコントロールすることは難しいため、肉骨粉
自体の製造を中止すべきではないか」とのコメントを1月から出し始めていた。し
かしSENASAは、「アルゼンチンはBSEの国際基準で最も高い安全性を有すクラ
スに分類されていることから反すう動物への給与は禁止しても、製造を中止する
理由はない」としており、今後どのようになるか引き続き注目していきたい。


 

【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成16年1月28日発)】 


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