ALIC/WEEKLY


米国内で初のBSE発生(その5)


海外家畜疾病諮問委員会・BSE小委員会は米国政府のBSE対策の評価報告を公表
  米国農務長官の諮問委員会である海外家畜疾病諮問委員会のBSE小委員会は4日、
米国政府のBSE対策を評価する報告書を公表した。報告書では政策形成に際して科学
を基にアプローチを試みる米国政府の基本的な姿勢を評価しているものの、今回の発生
を「単一の輸入されたもの」として判断するのではなく、北米地域土着のケースとして
認識すべきであるとして、追加的な対策の実施を提言した。具体的な報告内容の概要は
以下の通り。


疫学調査
  
  発生牛は成牛になるまで飼育されたカナダで感染した可能性が高いものの、カナダ等
から他の感染牛が輸入され米国産牛にも感染が生じている可能性がある。疫学調査を継
続しても成果は漸減するのでこれを終了し、その労力をサーベイランスの強化や他の措
置の企画や実施に振り向けるべきである。


対策

  政策が科学的に妥当な形で常に進められかつ見直されるよう、米国農務省(USDA)
の指導の下に政府および非政府関係者を含むBSEタスクフォースを設置する。


特定危険部位

  米国のBSEのリスクがOIEの基準に照らし最小限のものであると証明されない限
り12カ月齢を超えるすべての牛について、脳、脊髄、頭蓋、脊柱、小腸遠位端をSRM
として食料と飼料の双方から排除することを提言する。ただし、当面の間30カ月齢を超
える牛の中枢神経組織、頭蓋、脊柱、小腸を食品から排除することは妥協策を採ること
はやむを得ないと考える。SRMの除去の際の枝肉の交差汚染防止に留意する必要があ
る。スタンニングの方法や機械的除骨についても国際的な基準に整合させるべきである。


歩行困難牛(ダウナー)

  死亡牛および歩行困難牛の適切なサンプルを確保するための追加措置をUSDAは講
ずるべきである。また、このようなリスクのある牛のサンプルのための農家への指導等
も検討すべきである。


サーベイランス

  BSEの感染因子が北米内で循環していることが明白なので、サーベイランスをその
程度が確認できるよう大幅に拡大すべき。サーベイランスはダウナー等の高リスク牛を
対象とし、特に30カ月齢を超える高リスク牛については全頭を対象とする。この際の月
齢の鑑定には歯列の鑑別が有効である。食用目的でと畜される牛の全頭検査は公衆衛生
・家畜衛生の観点からは正当化されない。


検査
 
  一時的なスクリーニングとしての迅速な免疫的診断を採用すべき。検査材料の受領と
検査の期間の短縮や、全国にスクリーニング検査を行う施設の設置が必要。全国獣医研
究所(NVSL)のみをBSE同定施設とし、確定診断や専門的検査を担当させる。


飼料規制
  
  すべてのSRMは、ペットフードを含めたすべての動物用飼料から排除されるべき。
現行の米国の部分的な規制では不十分であり、すべてのほ乳類および家きんのたんぱく
をすべての反すう家畜飼料から排除する。この禁止措置および交差汚染防止措置が強力
に実施されるべきである。


トレーサビリティー

  北米の農業に適合した全国的な個体識別制度を実施すべき。


教育

  法規制の遵守の達成のためには効果的な教育プログラムが必要。BSEの症状に関
する情報の普及やBSEやその対策に関する教材の開発や大学等の教育課程への導入
が必要。 


その他

  北米でのBSEの発生は、輸入国が国際基準を示さない場合に輸出国が多大な社会
的影響を受けることを示した。米国が国際基準に沿った輸出入政策を採用し、貿易問
題においてリーダシップを発揮すべき。米国が肉骨粉等の潜在的な汚染物質を輸出す
るに際し、引き続き責任のある行動を継続することを希望する。

  



【ワシントン駐在員 犬飼 史郎 平成16年2月4日発】

元のページに戻る