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南米自由貿易圏の発足に向けた動き


 
メルコスルとアンデス共同体が協定を結ぶ

 メルコスル(南米南部共同市場)4カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグア
イ、ウルグアイ)とアンデス共同体5カ国(コロンビア、エクアドル、ベネズエ
ラ、ボリビア、ペルー)は、1995年2月から両者の地域において自由貿易圏を形
成する可能性の検討を開始し、今般、2003年12月16日ウルグアイの首都モンテビ
デオにおいて、メルコスルを構成するアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウ
ルグアイとアンデス共同体のうちコロンビア、エクアドル、ベネズエラが経済補
完協定(Acuerdo de Complementacin Econmica)を締結した。

  経済補完協定はラテンアメリカ統合連合(ALADI)内における協定で、生
産物の最大利用や経済補完の促進、競争条件の平等化、そして国際市場へのアク
セスを容易にさせ、加盟国間の平等で調和ある発展を促すことを目的とし、実際
にはメルコスルとアンデス共同体の国を中心に自由貿易圏を形成するための協定
となっている。ボリビアは1996年12月17日にメルコスルと経済補完協定第36号を
締結しメルコスルの準加盟国となっており、また2003年8月24日にはペルーが経
済補完協定に署名し、ALADIの許可を現在待っているところで、メルコスル
と自由貿易圏を先に形成しようとしている状況である。

  なお、76年10月にアンデス共同体を脱退したチリは、既にメルコスルと同協定
(第35号)を結んでいるほか、ベネズエラ(第23号)、コロンビア(第24号)、
エクアドル(第32号)、ペルー(第38号)とも協定を結んでいるため、ガイアナ、
スリナム、仏領ギアナを除く南米全域をカバーする10カ国で構成する大きな自由
貿易圏が発足する運びとなった。



今後の予定
 
 当協定には、関税の削減方法、一般セーフガード措置の導入、コロンビア・エ
クアドル・ベネズエラにおける特別セーフガード措置、動植物衛生規定、市場に
ついての情報交換等について規定され、2004年7月1日に発効する予定となって
いる。しかし、品目によって適応される関税削減方法はまだ決まっておらず、次
回2月中旬に予定されている会議で提示する予定である。



◎ イタリア食品最大手パルマラットの不正会計処理に対する影響

・アルゼンチン

   1月8日付けの報道によれば、アルゼンチン・パルマラットは「本社の財政
 問題は、当社における生産、加工、配給の各システムにこれまでのところまっ
 たく影響はなく、市場への供給は正常である」と回答している。
    しかし生産者は、支払いが不履行になる場合を想定し損害を最小限に食い止
  めようと、支払期限の短縮を要請した。新聞情報によれば同社は、10日ごとに
  清算を行っているが、生産者は週毎に清算することを要求している。これに対
  し同社は、1月14日現在、以前と同様の清算方法を実施している。
  
・ブラジル

  1月5日ロドリゲス農相は、パルマラット問題の影響等を話し合うため、乳
 業部門の関係者から成る協議会を招集した。農相が最も懸念していることは、
 「今は生乳生産が増加する時期であり、この期に乗じて一部の部門が生乳価格
 を引き下げようとしている。それにより小規模の生産者が生産を中止し、その
 後の供給が減少してしまうことである」と話している。なお、ブラジル・パル
 マラットのみに生乳を納入しているのは、リオデジャネイロ州北西部、リオグ
 ランデドスル州・パラナ州・ペルナンブコ州の一部地域の農協といわれている。
 ちなみにパルマラットの生乳購入量は、全国の生乳生産量2,200万キロリット
  ルのうち、約5%の100万キロリットルとなっている。
  さらに1月9日の農務省コミニュケでは、パルマラットに対して何ら救済措
 置を実施しないことを明らかにするとともに、生産者に対してはEGF(連邦
 政府貸し付け)による資金の融資や「フォーミゼロ(飢餓撲滅対策)」計画の
 一環として政府が粉ミルクを買い上げるなどを検討する用意があるとしている。
  また、ロドリゲス農相は、ブラジル・パルマラットの社長がイタリア本社を
 訪問し、自社の経営を守るため、ブラジル子会社が生み出した利益をイタリア
 本社の損失に充てないよう依頼する予定であることも明らかにした。



 

【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成16年1月14日発】 


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