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酪農家、依然困難な状況つづく デイリー・オーストラリア(DA)は6月21日、全国酪農家調査(抽出調査)の結果を発表した。この調査は 、2002年から03年にかけて発生した100年に一度といわれた大干ばつにより大きな影響を被った酪農家の酪農経 営に関する現状認識と将来の見通しについて把握するために行われた。 これによると、依然、多くの酪農家は、干ばつの影響により重大な試練に直面しており、資金繰りなどの面で 苦しんでいると答えている。また、将来の見通しとしては、投資には慎重であり天候や乳価の動向によっては生 乳生産量が増加するものの、離職率は減少せず、将来を悲観的に見ている数が楽観的に見ている数よりも多いと 報告されている。DAではこの調査結果について、「いいニュースばかりではないが、酪農家の現状が明らかに なり、酪農家が将来の酪農経営についてなんらかの判断を下すのに役立つものとなった」と評価し、「酪農家の 経営改善のために酪農家自身が努力できることを業界全体で支援していくことが課題だ」と述べている。調査結 果の概要は次の通り。 ○酪農家の現状認識 干ばつの影響により、豪州全体の生乳生産量は、2001/02年度に比べ約11%減少し、地域によっては減少割合 が18%に達した。乳牛の飼養頭数も約8%減少した。 調査結果によると、80%の酪農家が干ばつの影響を受けたと答え、そのうち55%の酪農家が干ばつ前の生乳 生産量に戻っていないとしている。さらに、干ばつの影響を受けた酪農家のうち48%は経営が回復しておらず、 45%は部分的にしか回復していないと答えている。干ばつの影響で負債が大幅に増加した酪農家は全体の40% にのぼり、わずかに増加したと答えた酪農家も23%に及ぶとしている。 ○酪農家の将来見通し 2004/05年度の気象状況は、ほとんどの地域で良好と予測され、豪ドル高が是正されてきていることや乳製 品の国際市場価格が短・中期的には好調に推移する見込みから、2004/05年度の豪州全体の生乳生産量は2% 増加する見込みである。 予測どおり2004/05年度の気象状況が良好に推移すれば、59%の酪農家が生乳生産量を増やすとしており、 約30%が10%以上増やすことを計画している。 また、今後3年間の見通しとしては、好天が続き乳価の変動がなければ、42%の酪農家は生乳生産量を増や し、3年間で乳価が1リットル当たり2〜3%上昇すれば、さらに21%の酪農家が生産を増やすと答えている。 一方、これから3年間で毎年5%ずつ酪農家の数が減少していくとしている。今後3年間で約15%の酪農家 はやめると答え、約10%の酪農家は、やめる可能性もあると答えている。これらの酪農家の19%が家族に農場 を手渡したいと考え、64%は農場や乳牛を売却するとしている。 さらに、調査時点では、将来を悲観的に考えている酪農家が46%、楽観的に考えている酪農家が34%、どち らともいえないと答えた酪農家が20%となっている。将来を楽観的に見ている酪農家は、経営者の中の20%を 占める39歳以下の若手に多い。 ○調査結果についての対応 調査結果についてDAは、@ 酪農産業は、干ばつの影響から完全に立ち直るまでには長い時間を要する A 問題解決には、産業界が多くの酪農家が直面している困難を理解することが重要 B 酪農家の現在の最 大の懸念材料は乳価などと総括している。これらに対しては、産業界として生乳生産量の増加を期待してお り、産業界が一体となった酪農家支援への取り組みを行うことが課題であると報告している。
【シドニー駐在員 井上 敦司 平成16年6月30日発】
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