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アセアンの酪農国 ミャンマーは、2003年には約144万頭の乳牛が飼養されており、年間約80万トンの生乳が生産されていると見込まれ ている。この乳牛頭数の中には、妊娠牛、乾乳牛、未経産牛および子牛が含まれている。 年間80万トンの生乳生産量は、近年生産の伸びの著しいタイの73万トン(2003年暫定値)を上回り、アセアン諸国 の中ではトップとなっている。 ミャンマーで生産された生乳の多くは、主に加糖練乳に加工され、紅茶やコーヒーとともに、ほとんどが国内で消 費されている。また、加糖練乳の原料には一部に輸入粉乳も使用されており、2002年には9,200トンほど輸入されたと している。 乳製品製造業者の数は、全国で約8,000となっている。 牛乳販売に新しい流れ 生乳の流通に関して、ヤンゴン市の場合、市内2カ所にインド人が経営する生乳取引所(現地では「ミルクマーケ ット」と称しており、私設取引所である。)があり、ここに生産者は生乳を持ち込み、需要者である喫茶店などの経 営者が購入している。 一方、飲用牛乳に関しては、豪州などからの超高温殺菌(UHT)牛乳が輸入されているが、これらはホテルや外国人 向けが消費の中心となっている。 このため、国内業者によるUHT牛乳の製造も考えられるが、現時点では、販売見込数量が不十分で、製造装置が過剰 投資になる恐れがあるため、乳業者は尻込みし、導入には至っていない。ちなみに、1日当たり16トン以上の処理が見 込めないと投資はできないとされている。 近年、都市部を中心に牛乳・乳製品需要が増加しているとされるが、特に首都ヤンゴン市では、近郊の小規模乳業 者が低温殺菌牛乳を製造し販売車によって市の中心部の消費者に配達を行い、好評を得ている例がある。ミャンマー の消費者には、低温殺菌牛乳のほうが栄養的に優れていると考えられており、現時点では需要に供給が追いつかない 状況といわれ、新たな牛乳需要となっている。 小規模酪農家振興事業 このような中、政府は国連食糧農業機関(FAO)の援助の下で、乳牛頭数が5頭以下の小規模酪農家と乳業者に対す る技術援助事業を行うことを3月8日に決定している。今月から実施予定であったが、その後、生乳の殺菌装置などの 研修用機材の準備の遅れから開始が来年にずれ込む見込みとなっている。 この事業は、小規模酪農家の所得の向上と消費者への安全な食品の提供を目的とし、同国農水省家畜改良・獣医局 (LBVD)がFAOが提供する35万6千ドル(3千880万円:1ドル=109円)の基金により、小規模酪農家および乳業者に対 して技術研修をLBVDとFAOの専門家の下で行うというものである。 初めにFAOの専門化が同国の獣医師に研修を行い、後に獣医師が小規模酪農家と乳業者の研修を行うという計画にな っている。中学卒業以上の者を対象とし、小規模酪農家300名と乳業者130名で、各々、3カ月間の生産、集乳、保管、 加工および販売に関わる研修を受けることとなっている。研修は農水省の畜産トレーニングセンターで行われ、宿泊 費用は無料とされている。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成16年7月7日発】
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