ALIC/WEEKLY
輸入食肉に関する衛生規則を強化 フィリピンでは高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)や口蹄疫などの家畜伝染性疾病が周辺国で まん延している昨今の状況などを受けて、このほど輸入肉及び食肉製品に関する衛生規則の強 化を図るとした。 同国農務省は2000年に施行された”Administrative Order No.39”(AO39)により食肉及 び食肉加工品の輸入に関する規定を定めており、輸出国の輸出業者はあらかじめこの規定で定 められる衛生証明書の取得が義務づけられている。しかし、実際には衛生検査が必ずしも適切 に執行されていなかったため、食肉密輸問題と併せて同国での食肉生産振興上の懸案事項とな っていた。 このような中、アロヨ大統領は今年5月下旬に衛生検査の適切な執行を目的にフィリピン食 肉検査コード(MICP)を承認した。同国農務省はこれに準じてAO39を改正し、衛生検査の厳格化 を図ることとした。これに対し同国の食品・農産品供給協会などの業界団体は、当該衛生規則 の強化は実質的な非関税障壁となり、食肉輸入業者にとってはコストの増大と事務の繁雑化を もたらすなど反対の声が上っている。 国際食品規格への適合の取組 一方で、今後ますます厳しさを増すと考えられる国際食品規格(コーデックス規格)に適合 した国産食糧・農産品の輸出拡大を図るため、同国農務省は休眠していた国立コーデックス 機関(NCO)の活動を再開すると発表した。NCOの復活は2000年以来とされ、休眠前は国連食糧 農業機関(FAO)やコーデックス委員会により定められた国際食品規格(コーデックス規格) に国内の食品安全基準が適合しているかどうかを検査していた。 近年、米国やEU各国では輸出相手国から衛生基準の厳密化が求められており、基準を満た さない場合には輸入を拒否されるケースがあったことなどを受け、NCOの活動再開により国内 の食品輸出業者などに対し相手国の求める衛生基準に適合する製品を提供するための指導を 行うとしている。なお、NCOは官民合同で運営される。 日本向け鶏肉調製品の輸出に意欲 同国は今年初めから周辺各国で発生が確認されたHPAIは確認されておらず、大手ブロイラ ー業者で構成されるフィリピンインテグレーター協会加盟企業のうちサンミゲル社が先行し て日本に鶏肉を出荷したほか、スウィフトフーズ社も鶏肉調製品の輸出を行っている。 また、外資による鶏肉加工場建設の動きもみられ、日本をはじめとするアジア地域での鶏 肉調製品に対する需要の高まりを受け、米国資本のパーデュー・ファームズ社はロイヤルカ ーゴ・コンバインドロジスティック社とともにラグナ州サンタ・ロサに総工費1億ペソ(213 百万円:1ペソ=2.13円)の鶏肉加工場を建設するとしている。同国農務長官は当該工場の承 認に際し、現地での雇用創出につながること、原料の調達は40%が国産品であることなどを挙 げている。なお、同工場は月間1万トンの鶏肉を米国から調達するとしている。 鶏肉特別輸入制限措置の緩和を発表 一方、今年初めに周辺国で発生したHPAIによる消費者不安から国内需要は減退した。これ により養鶏業者は生産調整を行い対応したものの、4月以降は鶏肉消費の回復などから供給 不足となり、今度は価格が高騰した。これに対し政府は高需要期に向けた国内供給不足解消 を理由に特別輸入制限(スペシャル・セーフガード)による関税措置の一部緩和を行うとし た。これにより期間限定で5千トンの輸入枠に限り通常関税率である40%のみが適用される。 なおこの枠は主に最低輸入限度量(ミニマムアクセスボリューム)枠を割り当てられた業者 以外が優先配分される。 このように輸出振興を急ぐ政府の思惑に反し、国内需給安定そのものに不安要素があり、 価格調整や需給安定対策面での政策整備が必要とされるなど、解決すべき課題が多い。 【シンガポール駐在員 木田秀一郎 平成16年6月12日発】
元のページに戻る