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「EU産」は時期尚早 EUの農相理事会が6月21日開催され、その中で牛肉の表示について議論が行われた。現在、加盟国にお いては、国名を明記することとなっている牛肉の表示について、EU加盟国内のものである場合には、「E U産」とすることについては加盟各国の賛同は得られなかった。一方、各国が独自に外食産業部門などに国 名を明記させても構わないとの結論となった。 表示は消費者の信頼回復などに寄与 EUでは、牛海綿状脳症(BSE)発生などを踏まえ、牛肉のトレーサビリティを向上させるため、2000 年9月1日からEU域内で牛肉および牛肉製品を販売する者に対し、牛個体と牛肉の関連を示すコード、と 畜場の所在国名などの表示義務が適用され、その後2002年1月からは、牛個体の生産国名、肥育国名も明記 することとなっている。 本年4月、欧州委員会は食品獣医局(Food and Veterinary Office)が2002年と2003年において全加盟各 国に対して実施した検査結果に基づき、牛肉のトレーサビリティと表示に関する規則の実施状況レポートを 公表している。この中で、EUの実施している牛肉のトレーサビリティと表示が、BSE発生後の消費者の 信頼回復と牛肉消費の回復に寄与しているとしている。その一方で、原産国名を明記することとなっている ことが、国産品愛用(re-nationalisation)の原因となり、他の加盟国産の牛肉流通の支障となっているこ とから、国名ではなく「EU産」とすることについての検討などを欧州委員会は提起していた。 修正の必要なし、ただし検討を開始 今回の農相理事会では、現時点で現行の規則を修正する必要はないとするとともに、 @ 加盟各国の国名表示に代えて「EU産」とすることは、現時点においては時期尚早であること A 農相理事会としては、牛肉の表示を課する対象を外食産業部門などへ拡大する必要はないと考えるが、 現行の規則の下、各国が独自に外食産業部門などに国名を明記させても構わないと確認したこと B 加盟国により子牛肉と規定する牛の異なった月齢を統一する必要があること C 部分肉(secondary cutting)などの表示の簡素化の可能性については、欧州委員会における管理委員 会の手順に従って検討することとの結論が出された。 この表示に関しては欧州議会でも議論されることになっており、全体として結論が出るまでには時間を 要するとみられている。 衛生証明書に関するロシアとの議論進展なし 今回の農相理事会では、欧州委員会より各国の農相に対し、ロシアとの間で議論されているEU産畜産 物の衛生証明書についても報告が行われた。これによれば問題解決のための専門家レベルの最終的な議論 がこの週に行われること、必要な場合は、バーン委員(保健・消費者保護担当)自ら、議論に参加する (閣僚レベルに引き上げる)用意があるとの説明があった。さらに、同委員より、ロシアがこの問題を解 決する意思があるとは確信できないとの説明がなされた。 【ブリュッセル駐在員 関 将弘 平成16年6月23日発】
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