ALIC/WEEKLY
アルゼンチン牛肉輸出業者連合(ABC)は、アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)およ びアルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)のデータを基に、2003年における牛肉の需 給動向を総括するレポートを2月13日に公表した。 当レポートには、詳細なデータ値等が掲載されていないため、SAGPyAおよびSENASAの 資料等で補足しながら紹介する。 と畜頭数が回復傾向 2001年3月にアルゼンチン国内で発生が確認された口蹄疫のため食肉パッカーの産業活 動は抑制されてきたが、2003年のと畜頭数は1,233万頭と2001年の1,158万頭、2002年の 1,150万頭をそれぞれ6.4%、7.2%上回り回復傾向にある。特に5月以降は毎月100万頭 以上がと畜されており、年後半にかけての回復が顕著となっている。しかし、口蹄疫発生 前の2000年のと畜頭数1,240万頭には達していない。 また去勢牛の全体に占めると畜頭数割合(注)は30.7%と前年の32.5%より後退した。 これは、口蹄疫の発生により去勢牛の主な買い手であった輸出向けパッカーが数多く閉鎖 された2001年の30.6%と同程度である。一方、雌牛のと畜頭数割合は44.3%で、2001年 の42.1%、2002年の43.1%と増加傾向で推移しており、将来の生産活動にとって憂慮す べき状況となっている。これは、前年9月末から問題になったパンパ地域における局地的 な干ばつにより牧草や飲料水がなくなったことや2002年の経済危機の影響のため、雌牛を と畜する傾向が強まったことが原因である。 (注):と畜頭数割合の数字には、脱税目的で家畜重量とカテゴリーを不正申告する場合 があることを、考慮する必要がある。 生鮮肉と内臓の輸出が大きな伸びを見せる 口蹄疫発生のため主要国は生鮮肉の輸入を禁止していたが、2002年2月にEUへの輸出 が再開され、それ以降順調に輸出が伸びている。 2002年の輸出量は35万トン(枝肉換算ベース)、輸出額は4億8,100万ドル(約524億1,600 万円、1ドル=109円)であったが、ABCの推計によれば2003年の輸出量は前年比13%増の 40万トン弱、輸出額は同32%増の6億3,300万ドル(約690億1,800万円)に達すると見込 まれる。 この輸出の伸びは、生鮮肉(EU向け高級牛肉であるヒルトン枠を除く)および内臓の 輸出が好調だったことによるもので、2003年の生鮮肉の輸出量(製品ベース)は前年比44% 増の15万5,300トン、輸出額は同93%の2億8,100万ドル(約306億3,800万円)であった。 また内臓の輸出量(製品ベース)は同29%増の7万2,000トン、輸出額は同75%増の5,630 万ドル(約61億3,300万円)となっている。なお、昨年9月にアルゼンチン国内のボリビ ア国境近くにおいて口蹄疫発生が確認されたことから、一部の国は輸入禁止措置を講じた。 このうちもっとも影響が大きかったのは、禁止措置を講ずるまで輸出市場の第3位であっ たチリを失ったことであった。 このようにアルゼンチンの潜在的輸出能力の障害となっている現在の衛生面での制限を 撤廃することがいかに大切であるか、また、取得した衛生ステータスの維持および輸入を 停止している国との交渉が、食肉部門のさらなる発展を支えていく上でいかに重要なカギ となるかがわかる。 輸出平均価格はやや回復、国内消費量も増加 2003年のトン当たり枝肉平均輸出価格は1,500ドル(約16万4,000円)弱で、口蹄疫発 生や経済危機の影響があった2001〜2002年の同1,300ドル(約14万2,000円)を上回った が、口蹄疫発生前の90年代の同1,800〜2,000ドル(約19万6,000円〜21万8,000円)には 回復していない。 1人当たり年間消費量は、国内の牛肉小売価格が比較的安定して推移したことに加え、 経済の全般的な回復により61.2キログラム(枝肉換算ベース)と推計され、前年の59.1 キログラムを2キログラム上回ると見込まれる。なお、2002年の経済危機により生体価 格は上昇したが、パッカー等はこれを価格に直接転嫁することができなかった。しかし 2003年初めから生体価格が下降したことにより、利幅はやや回復していると言える。 口蹄疫による輸出制限がなければ4億ドルの輸出が可能と見込む なおABCレポートは最後に「もしアルゼンチンが現在生鮮肉の輸入制限を設けている 国に輸出することができていたなら、カナダで発生した牛海綿状脳症(BSE)により 米国、豪州、ニュージーランドの輸出業者に有利に働いた特異的な状況を、アルゼンチ ンも最大限に利用することができ、約4億ドル(約436億円)に及ぶ追加的な輸出を可 能にしたであろう」としており、口蹄疫による制限措置により輸出単価の低いそして限 られた市場内で活動することが、いかにアルゼンチンにとって損失が大きいかを述べて いる。 【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成16年3月2日発】
元のページに戻る