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採卵鶏の減少が卵価を押し上げ タイでは今年1月に高病原性鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の発生が確認され、殺 処分によってまん延を防止しているが、監視中の地域からも新たな感染が確認されなかったこ とから、5月14日タイ政府は終息宣言を行った。このような中、鶏肉とともに鶏卵の需要も回 復しつつあり、特に鶏卵は3月の中頃に1個当たり平均1.7バーツ(4.8円:1バーツ=2.8円) であったものが、4月の末には3バーツ(8.4円)と急激に価格を上げている。 この背景には、消費者の安心感による購買意欲の回復のほか、殺処分に供された約3千万羽 のうち約1千万羽が採卵鶏であり、その結果、採卵鶏羽数が発生前の3分の2に大きく減少し た需給上のアンバランスが反映したものと考えられている。 養鶏協会(PRA)によれば、高価格が生産を刺激するので、殺処分後の採卵鶏の導入が一巡 して産卵を始めれば、需要に見合った生産が期待されるとしている。 代替需要と飼料高騰で豚価上昇 また、豚肉についても、鳥インフルエンザの発生により、鶏肉の代替需要として価格が上昇 している。 鳥インフルエンザ発生前、豚肉の小売価格が1キログラム当たり73バーツ(204円)だった ものが、5月の初めには110バーツ(308円)と50%も上昇している。 また、全国養豚協会(NSRA)によれば、飼料価格が高値を維持した場合、子豚を導入して肥 育する生産者は、費用の増加を避けるため、導入頭数を減少させなければならず、その結果、 供給が減少するとしている。 インフレ要因にも 4月の消費者物価指数は対前年比で2.5%上昇しており、2001年5月以来の高い数値となっ ている。1〜3月の平均上昇率は2.1%であり、4月に騰勢を強め、建築資材などのほか上昇 原因の一つに農畜産物、中でも豚肉価格の上昇が指摘されている。 農産物価格の維持を担当する商務省内国取引局(DIT)は、豚肉価格の高騰を抑えるため、 4月下旬に養豚および食肉加工団体と会合を持ち、養豚団体に対しては、生体出荷価格1キ ログラム当たり55〜57バーツ(154〜160円)のものを52バーツ(146円)で、加工団体には小 売価格が105〜110バーツ(294〜308円)のものを100バーツ(280円)にするよう要請した。 これに対して、NSRAは、現状の利益率は約15%で、農業省の指導する20%以内に合致し、 生産コストは48〜49バーツ(134〜137円)で一定化しており、価格上昇の原因は飼料原料価 格の上昇であると説明した。4月の後半には、鳥インフルエンザ発生以前と比較して、トウ モロコシが1キログラム当たり5バーツ(14円)から7バーツ(20円)に、大豆が11バーツ (31円)から16バーツ(45円)と値上がりしている。 畜産業界は飼料原料の無税枠などを要求 2004年のタイのトウモロコシ輸入に関しては、5万4,700トンの枠を関税率20%で3〜6 月間に消化することとなっているが、畜産関係10団体は、政府に、飼料価格の上昇を抑える ため、@トウモロコシの輸入関税と輸入期限の撤廃Aトウモロコシの輸入枠の拡大と課徴金 の廃止B大豆ミール関税(5%)の撤廃を要望した。 これに対して、DITは、トウモロコシの1カ月当たりの需要は30〜35万トンであるが、現 在の在庫は72万トンしかなく、国内で収穫の始まる8月までの必要輸入量を50万トンとする とともに輸入期限を7月まで延長する内容の対応案を取りまとめ、政府の審議機関である国 家食品政策委員会(NFPC)に申請するとした。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成16年5月14日発】
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