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関税割当年度開始から3カ月経過して配分数量が決定 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は、「ヒルトン枠」の食肉パッカーへの具体的な配分数 量を定めたSAGPyA決議第1108/2004号(2004年10月13日付け。以下決議はすべてSAGPyA)を10月14日 に公布した。 アルゼンチンはEUから、一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当制度(通称ヒ ルトン枠)により、当年7月1日は、決議第113/2004号(2004年1月22日付け)により制定されてい た(本紙通巻第614号を参照)。 しかし、具体的な算定方法などの詳細事項が不明であること、利幅の大きいヒルトン枠(牛肉の 全輸出量に占める割合は約10%であるが、輸出単価が高いため全輸出額に占める割合は約30%)を 獲得するため食肉パッカーが訴訟を起こすことなど(本紙通巻第604号を参照)により、具体的な 配分数量の決定が遅れていた。 SAGPyA、配分方法などの詳細を規定 このような中、カンポスSAGPyA長官は7月12日に裁判判決など(以下「司法枠」とする)で獲得 している数量を放棄するように関連パッカーを集めて要請した。司法枠により差し押さえられた数 量が多くなり、配分方法によりSAGPyAの政策方針を反映させにくくなっていたからであるが、7月 28日の発表によれば、この要請に応じたのは15社、2,000トン分であった。 以上のような状況ではあったが、SAGPyAは9月29日に決議第904/2004号(2004年9月28日付け) を公布し、2004〜2008年の4期間の配分方法を定めた決議第113/2004号を改正し、配分方法などの 詳細を規定した。(概要は下記参照) 配分数量に対し、不満続出 決議第1108/2004号は、決議第904/2004号(改定された決議第113/2004号)に基づき、2004/05年 度の各食肉パッカーへの配分数量を定めているが、連日新聞紙面上には配分数量について、批判や 不満、非難の談が掲載され、大統領府前の広場ではデモまで行われている。このような中、新聞で 大きく取り上げられているのはアルゼンチン牛肉輸出業者連合(ABC)の批判であり、ABCが 特に問題視していることは、「牛肉輸出の80%以上を占めるABCに加盟しているパッカーは司法 枠を放棄し、よってそれによる配分を受けているものはいないにもかかわらず、@司法枠で配分さ れた数量が約40%に上ること、A同じく司法枠においてSUPBGA社1社のみで9.2%に相当す る2,599トンを取得していること」である。 また公的機関としてはサンタファ州の知事や国会議員から、「州内のパッカーに配分された量が 前年度から数千トン近く減少したため大きな損失」であると、決議第1108/2004号を問題視している。 このような中、カンポス長官は17日からフランスで開催された国際食品展(SIAL)に参加す るため不在となり、代わってサブサイ次官が対応しているが、問題が収束化する気配は見られず、 25日には大統領とサンタフェ州知事らが会見するなどの動きもあり、現地では配分方法に関する法 案を国会に提出すると話したと報道されている。 【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成16年10月27日発】
(参考)決議第904/2004号による配分方法の概要 (下線部が旧決議第113/2004号からの主な変更点) 1 総枠から後述の2、3、6、7を差し引いた枠の配分方法 @ この枠に該当する75%は、過去3年間の骨なし冷蔵・冷凍牛肉の各企業の輸出実績(FOBベー ス。ヒルトン枠に該当する実績を除く)に基づき配分する。ただし輸出実績の勘案比率は、3年 前を20%、2年前を30%、前年を50%とする。なお算定期間は、5月1日から翌年4月30日の 1年間を単位とする。 A 残る25%は、(@)骨の有無に関係なく冷蔵・冷凍牛肉(ヒルトン枠に該当する実績を除く)、 (A) 冷凍煮沸キューブ状肉(IQF(個別急速冷凍)製品)および特別製品(例えばビーフジャ ーキーなど)、(B)加工牛肉やコーンビーフなどの加工製品、(C)内臓の輸出実績合計(FOB ベース)に@と同様の計算方法によって配分する。ただし、(B)(C)の合計輸出量は、1期目は 75%、2期目は50%、3期目は25%が勘案され、4期目はカウントされない。(なおSAGPyAによ れば、この項では“輸出量=輸出額”となる)。 2 輸出パッカーとブリーダー協会や生産者団体の共同プロジェクトに対しSAGPyAが別途定める規定 に基づき配分する枠は、1期目が7%、2期目が8%、3期目が9%、4期目が10%である。 3 総枠の7%は、各州における肥育牛などの飼育頭数により比例配分され、その後州内にあるEU に輸出許可を持つパッカー間で配分される。ただし、1施設当たり200トン以上の配分はあり得な い。 4 各企業とも始めの2期間中、直前の期間にヒルトン枠以外で輸出した量と当決議で割り当てられ る量は、2:1の比率を維持すること。なおその後は3:1の比率とする。ただし、この比率を下 回る場合は配分された量は削減され、逆に上回っても追加はされない。 5 ヒルトン枠申請の最低条件として、ヒルトン枠の年対象期間の直前の期間に、ヒルトン枠以外の ものを1のAの製品を重量換算により1期目申請時には200トン、それ以降は400トン輸出している こと。 6 いかなる施設も総枠の6%を超えることはできず、それを超える場合は削減される。またいかな る企業も5の要件を満たす場合、100トン以下の配分がされることはなく、もし100トン以下の場合 は100トンの枠が与えられるが、同一企業に対してこの措置は2年間のみとする。 7 前3期間において枠の配分を受けなかったものを新規の施設とし、そのうちサイクル1(と畜を 含む処理加工工程対応)に200トン、サイクル2(加工工程のみ対応)に100トンを2期間与えるが 、2期目を申請するためにはヒルトン枠以外のものを1期目に1のAの製品を重量換算により、2 倍以上の輸出量実績が必要である。なお1の規定により本規定の割当量を超える場合でも、配分増 加は認められない。 8 企業間の枠の譲渡を禁じる。ただし、同じ企業内において各施設に配分された枠の移動は認めら れる。 9 ひとつの期間で与えられた枠の最低70%を3月1日時点で履行しない場合は、残りの枠は没収さ れ、他の資格者に再配分される。なお、SAGPyAは同一期間を7月1日〜12月31日、1月1日〜6月 30日に分け、それぞれ50%ずつ配分することができる。
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