ALIC/WEEKLY
FSIS、監視強化のための専門官を配置 米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)が所掌する人道的なと畜に関する法律(HMLS:Humane Method of Livestock Slaughter Act)は、と畜施設における家畜の人道的取り扱いの実施や人道的考えに基づく と畜方法の実施を目的に定められ、FSISの認可を受けると畜施設は、連邦食肉検査法とともにHMLS法の順 守が義務付けられている。HMLS法では、 @と畜方法:家畜は、炭酸ガス、打額(エアーインジェクション を除く)、銃撃、電撃などの方法でスタンニングを行い、家畜が苦痛を感じないようにすること、 A家畜 の取り扱い:係留場、通路などでのけが防止のための対策を講じることおよび係留場における家畜への飲 料水および十分なスペースの確保などについて定められているとともに、FSIS検査官は、それらが不適切 であると判断した施設に対して、改善措置を命ずる権限が与えられている。 FSISでは、2002年2月からHMLS法の順守状況の監視強化を目的に地域獣医専門官( District Veterinary Medical Specialist )を配置するとともに2003年11月にはHMLS法監視のための補足的な基準や違反行為が 行われていた際の取り扱いなどに関する指令を発している。 FSIS、会計検査院からの順守状況記録不備の指摘を受け、記録保持システム構築 下院議会は米国会計検査院(GAO)に対し、同法の順守状況などについての調査を命じ、GAOが今年1月、 その結果を報告している。報告によれば、調査期間(2001年1月〜2003年3月)において、FSISが指摘し た違反事例は553例、272カ所の施設に達したとしている。違反事例では、法に定める適切なスタンニング を行わず、家畜に苦痛を与えずに素早くと畜できなかった違反事例が最も多く、次いで施設設備の不良に よる家畜事故(けが)の発生などが挙げられている。更に報告では、FSIS検査官に対する同法の周知徹底 が十分でなく、順守状況の記録が適切に保管・整備されていなかったことが問題であるとし、FSIS検査官 への教育や記録保持の徹底を指摘している。 FSISではこの報告を受け、FSIS検査官の教育と記録保持徹底のため今年2月から人道的取扱追跡システ ム(Humane Activities Tracking System)を導入している。 と畜施設に対し、法律順守のための体系的手順の実施を通知 法律順守のさらなる強化のためFSISは9月9日、と畜施設が実施すべき体系的手順(Systematic Approach) について通知した。その概要は次の通り。 1 初期評価の実施:家畜の導入から係留場および追い込み時において、どこでどのような状況で家畜が 興奮したり事故が発生したりしたか、どのような状況でスタンニングに問題が発生したかを検証する こと。 2 施設設備の設計と実施:初期評価を踏まえ、家畜の興奮、家畜事故およびスタンニングの問題点を最 小限にするため、ペン(係留場)の広さの設定、床の滑り止め防止、急カーブやUターンのある通路の 設置防止などについて法で定められた基準に基づき設計すること。 3 定期的な評価:従業員が法で定められた実施方法により、家畜事故などを最小限のものにしているか、 効果的なスタンニング方法により実施しているかについて定期的に評価すること。 4 改善:実施の過程で問題点が発生した場合、施設の改善など適切な処置を講ずること。
【ワシントン駐在員 道免 昭仁 平成16年9月15日発】
元のページに戻る