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干ばつの被害から回復に向かう農家経営(豪州)


2003/04年度は穀物が損益改善のけん引

  豪州農業資源経済局(ABARE)は3月末、農業経営の動向を探る最新の農家調査を発表した。今回の調査で
は、2002/03年度から2004/05年度にかけての状況および見通しが報告されており、2002年からの記録的な干ばつに
より大きな打撃を受けた生産農家の経営は、その後の気象状況や生産コストの改善などにより、徐々にではあるが
立ち直りをみせている。

  ABAREによるこの調査では、部門ごとの抽出農家を対象に経営状況を分析しており、大きく分けて@穀物・
畜産部門(穀物専業(小麦主体)、穀物・家畜複合、肉牛専業、羊専業、羊・肉牛複合の5つに細分類)、A酪農
部門の2つの部門の調査から構成されている。
 
  穀物・畜産部門の調査をみると、2003/04年度の1農場当たりの事業損益は平均6,980豪ドル(59万3千円:1豪
ドル=85円)の利益となり、多大な損失となった前年度から一転して黒字を計上した。しかし、干ばつの影響から
飼養頭数の回復が遅れる肉牛専業や酪農部門では、前年度に引き続き事業損益は赤字を計上しており、結果として
、同年度に過去最高水準の収量を記録した穀物関連の利益が全体を底上げする形となっている。





大規模経営で改善が見られる肉牛専業農家

  穀物・畜産部門の中で、農業として豪州で最も土地利用面積が大きく、広範囲に分布する肉牛専業についてみる
と、2003/04年度の1農場当たりの事業損益は平均して22,990豪ドル(195万4千円)の損失となった。同年度は、
農家での牛群再構築や市場での肉牛価格の上昇など、干ばつによる被害から回復に向かう動きが目立ったが、肉牛
頭数の減少が結果的に農家の素牛導入経費に跳ね返ったことから、安価な飼料価格などにもかかわらず、農家収益
の改善には大きく寄与しなかった。

  しかし、飼養頭数規模でみると、300頭以上を飼育するいわゆる大規模農家での2003/04年度の事業損益は、1農
家当たり平均100豪ドル(8,500円)とわずかながらも黒字に転じており、300頭未満の肉牛を肥育する農家との損
益格差が広がりつつある。

  2004/05年度についてABAREでは、取引頭数の増加や高値で推移する肉牛価格、また、飼料価格の低下に伴
い大規模農場を中心に事業損益は大きく改善し、最終的には1990年後半の水準に近づくと予測している。また、肉
牛農家の農地価格が上昇傾向にあることから、これも農家資本に好影響を与えているとしている。


2004/05年度は回復が予測される酪農部門
  
  酪農部門についてみると、2003/04年度の1農場当たりの事業損益は平均14,210豪ドル(120万8千円)の損失と
なり、大幅な損失を記録した2002/03年度の40,030豪ドル(340万3千円)から改善に向かいつつあるが、依然とし
て赤字体質が続いている。しかしながら、2004/05年度についてABAREでは、干ばつにより被害を受けた牧草
の生育状態も改善に向かっており、また、かんがい施設の改良や穀物など飼料価格の低下に伴う生産コストの削減
などから、1農場当たりの事業損益は平均2,500豪ドル(21万3千円)の黒字になる予測している。

  また、2004/05年度の生乳生産者乳価については、乳製品国際価格が高値で推移していることから上昇基調にある
としており、穀物などの飼料価格が引き続き安値安定で推移すれば、その他経費の増加分を相殺しても酪農部門は
十分な収益確保が図られるとみている。




【シドニー駐在員 横田 徹 平成17年4月7日発】  
 

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