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未承認GMトウモロコシが不注意で流通 欧州食品安全機関(EFSA)は4月12日、EUで未承認の遺伝子組み換え(GM)トウモロコシBt10が流通して いた問題について、欧州委員会を科学的な面でサポートする声明を発表した。 EFSAは3月23日、バイオテクノロジー会社であるシンジェンタ(Syngenta)社が開発したBt10という名称の未 承認GMトウモロコシ10キログラムが、スペインとフランスに米国から不注意で輸出されていた報告を受けた。シン ジェンタ社は、EUで承認されていないBt10と承認されているBt11の両者を生産しているが、これは、Bt10がBt11と して、研究開発目的で輸出されていたものである。 Bt10には、アンシピリンが含まれる GMトウモロコシBt11は、害虫抵抗性の遺伝子および除草剤耐性マーカーの遺伝子を組み込んだGM作物であり、 1998年4月に、EU域内での流通が認められた。今回問題となっているBt10は、Bt11とほとんど同じ遺伝子を組み込 んだトウモロコシであり、両者とも殺虫性を持つたんぱく質を発現するなどほとんど同じ性質を持つものであること が報告されていた。 欧州委員会は、Bt10が輸入されていたことが判明したことから、シンジェンタ社および米国当局から情報などを得 て、Bt10の特徴や安全性について確認を行ってきた。その結果3月31日、Bt10は、抗生物質抵抗性マーカー(遺伝子 組み換えを行うに当たり、目的遺伝子が組み込まれたかを確認するための目印として用いられる、抗生物質に耐性を 持つ遺伝子)のアンピシリンを含むことが、明らかとなった。そこで、欧州委員会は4月1日、シンジェンタ社およ び米国当局に、Bt10に関する詳細な情報を求めている。 EFSAのBt10に関連する声明 EFSAはBt10の安全性に関連する声明の中で、次の2点を強調している。 @EFSAは2004年4月、GM作物における抗生物質抵抗性マーカーの使用についての意見(Opinion)を発表し た。この中で、EFSAのGMOに関するパネルは、アンピシリンは、実験目的のみで使用されるべきで、流 通するGM作物に存在するべきではないと結論付けていること。 A抗生物質抵抗性マーカーを除きほとんど同じ性質を持つBt10とBt11について、EFSAと欧州委員会は、シン ジェンタ社に対し、Bt10の安全性に関するすべての情報と評価のため、Bt11との識別方法の開示について要求 していること。 米国からの飼料用トウモロコシグルテンにBt10フリーの証明書を要求 こうした中、EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は4月15日、米国からの飼料用トウモロコシグルテン などの輸入に対する欧州委員会からの緊急措置の提案を承認した。この措置は、米国産の飼料用トウモロコシグル テンおよびビール粕のEUでの流通を、Bt10が明らかに含まれていないことを公認の研究機関が証明する分析報告 書なしには認めないというものである。所要の手続きを経た後、来週初めに適用されることとなる。なお、この対 策は、本年10月末に見直すこととしている。 【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成17年4月13日発】
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