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豚肉を価格管理対象に追加 タイ商務省の商品・サービス中央委員会は5月3日、豚肉をセメントやプラスチックペレットなど7品目ととも に価格管理対象品目とする決定を行った。この措置はインフレを回避するため、生活に関連する商品やサービスの 価格を政府の監視下に置き、不当な値上げなどを防止することで物価を安定させようとするものである。この措置 は昨年の1月に導入され、当初は16品目と2種類のサービスに関して設定されていた。 政府は豚肉価格の動向に不信感 今回豚肉が管理対象となった理由は、最近の飼料価格が一時期に比べて低下しているにもかかわらず、豚肉価格 は反対に上昇する傾向で推移しており、異常な値動きになっていると見られたためである。昨年9月の生体での卸 売価格はキログラム当たり40バーツ(108円:1バーツ=2.7円)であったものが4月には53バーツ(143円)と3割 も上昇しており、小売価格も100バーツ(270円)を超えるところがあるとしている。一方、飼料原料の大豆ミール の輸入価格は同トン当たり13,800バーツ(37,260円)から9,600バーツ(25,920円)と逆に3割の下落となってい る。 このため、政府は、談合などによる不適切な値上げが確認された場合には、法的処置も辞さないとした。 生産者団体は反発するも政府に従う 卸売価格が高いとの指摘を受けた生産者の団体である養豚協会(NPBA)は、「農家の経営が苦しい時には政 府は何も支援を行わなかったにもかかわらず、このように生産者が利益を上げることができる機会を失わせるのは 遺憾である。また、生産者の販売行動を監視するのは困難である。」と訴えたが、政府は、その主張は受け入れず、 協会は生産者が価格統制に従うよう指導することとなった。 大幅に増加した豚の生体輸出 関税局の取りまとめた生体豚の輸出頭数は2005年の1〜5月では3万2千頭となっており、昨年同期の約3,800 頭の約9倍で、政府の統計では非常に増加している。 また今回、豚肉が管理リストに加えられた背景には、周辺国への密輸が増加し、国内供給が不足しているのでは ないかとの疑念があったとされている。 豚の低価格が輸出を誘導か タイはラオス、カンボジア、ミャンマーおよびマレーシアと国境を接しているが、マレーシアを除く3カ国との 国境は長く、交易も盛んであり、密貿易も行われていると推測されている。家畜もその対象となっているとされる が、食肉では輸送や保管などに問題があり、鮮度が保てないので、生体での輸送が多いとされている。 売買価格差が取引の大きな原因であるが、直近の3月から6月の生体での卸売価格の平均を米ドルに換算して比 較すると、タイの1キログラム当たり1.28ドル(143円:1ドル=112円)に対して、カンボジア同1.36ドル(152円)、 ラオス同1.40ドル(157円)ミャンマー同0.76ドル(85円)となっており、単純な比較では、タイの豚はカンボジ アやラオスの豚よりも6〜9%安いということになる。 卸売価格は横ばいへ 豚の生体卸売価格は4月に1キログラム当たり53バーツ(143円)と直近での高値を記録した後、5月と6月に はそれぞれ52バーツ(140円)と横ばいで推移しており、この時点では豚肉に関して行政措置が功を奏した状態と なっている。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成17年7月28日発】
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