ALIC/WEEKLY


WTO農業交渉に対する農業団体の反応


  欧州農業組織委員会/欧州農業共同組合委員会(COPA/COGECA)は11月23日、現在の世界貿
易機関(WTO)のドーハ開発計画(DDA)における農業交渉での議論が、欧州の持続可能な農業に脅
威を与えているとして声明を発表した。


他国の交渉方針に対する不満

  声明発表の前日に開催された理事会では、以下のような他国の交渉方針に対する不満の意見が出された。
  
・12月に開催される香港での閣僚会議において、進展を期待するものの、EUと同様の柔軟性を他国が示さ
 なければ合意に至る可能性はないであろう。
・サービスや工業といったほかの分野の市場開放の議論をそらすために農業分野を利用している。もし香港
 会合が成功しない場合でも、欧州農業に責任はない。
・米国に対し、貿易わい曲的な価格支持政策であるローンレートや価格変動対応型支払いの現実的な削減を
 求める。
・米国、ニュージーランド、カナダに対し、EUの輸出補助金の撤廃と同様な輸出信用、輸出国家貿易、食
 糧援助の撤廃を求める。



EUの新提案に対する不満

 一方、10月28日に公表されたWTO農業交渉におけるEUの新提案について、欧州委員会が行ったとする
影響評価に対し、大きな驚きを持ってコメントしている。

 同委員会が行ったとする影響評価によれば、新提案による畜産物価格、生産量、生産額への影響は、おお
むね、現行の共通農業政策(CAP)のそれより大きくなると分析している。

 したがって、今回の提案は、二度の広範なCAP改革を超える提案であり、CAP改革以上に農畜産物の
価格が低下することはないと信じていた生産者を裏切るものであるとして非難している。

 結果的には、現在の議論により、欧州の持続可能な農業は破壊され、ブラジルのような環境に恵まれた国
の生産者が拡大をするだけであり、今次ラウンドの本来の目的である貧しい開発途上国が利益を得ることは
ないとしている。





EU、鳥インフルエンザ対策の見直しを決定

 フードチェーン・家畜衛生常設委員会は11月23日、欧州委員会より提案された鳥インフルエンザ対策の見
直しについて合意した。

 今回の合意内容は、鳥インフルエンザ発生国からの輸入一時停止措置の見直しと、現行の家きんへの鳥イ
ンフルエンザ感染防止策の延長についてである。

輸入の一時停止措置については、これまで発生が確認されたロシア、トルコ、ルーマニア、クロアチアから
は、各国の全域から、生きた鳥、家きん肉、そのほかの家きん製品すべての輸入が一時停止となっていた。
今回の見直しでは、これまで各国で講じられた対策により、輸入規制品目の緩和や一部の輸入禁止地域以外
からの輸入が可能となる。

 感染防止策の延長については、リスクの高い地域を各国が特定し、これらリスクが高いとした地域では、
家きんの屋外での飼養の禁止などにより家きんへの感染拡大を防止する対策が講じられており(海外駐在員
情報第695号参照)、この適用期限が12月1日までとなっている。今回、これが2006年5月31日まで延長される
こととなった。



【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成17年11月30日発】

元のページに戻る