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太平洋4カ国のFTAに署名(チリ)


交渉中断期間を経て署名 

 チリ外務省国際経済関係総局(DIRECON)は7月18日、チリ、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイの
太平洋4カ国(P4)が「戦略的経済連携協定(Trans-Pacific SEP)」に署名したことを公表した。なお、同時に
労働分野と環境問題への協力に関する覚書も取り交わされた。

  P4によるFTAは、2002年10月のAPEC首脳会談において、当初チリ、ニュージーランド、シンガポールの3
国で交渉開始が合意、その後、当初はオブザーバーとして参加していたブルネイが2005年6月に加盟国として正式に
承認された。途中、チリ酪農関係団体の反対から交渉が中断したものの、2004年8月に再開、2005年4月に大筋で合
意し、6月に交渉終結の共同宣言を発表、今回の署名に至った。今後、各国での国内の手続きを経て、確認書簡を送
付、2006年1月1日から発効する予定となっている。

  DIRECONのカルロス・フルチェ局長は今回の署名について「世界市場、特にアジアにおいてこれらの国々が
競争力を向上させることが可能となり、今回の署名に至ったことを大変喜ばしく思う」と評価した。

  また、チリ生乳生産者連盟(Fedeleche)などは、ニュージーランドと乳製品分野で国内製品が競合することから、
問題を分析した上で交渉に臨むよう要請していたが、今回満足のいく結論に達したことを評価している。



乳製品は段階的な関税引き下げ

 チリがP4域内に対して認めた関税の削減は、対象品目の74.6%が無税、4%が3年間で無税、10.9%が6年間、
3.1%が10年間またはそれ以上とされている。これにより、チリのニュージーランドからの輸入については、対象品
目の88%が無税となる。

  なお、畜産分野におけるチリの輸入関税については以下のようなものがある。

・牛肉:現行6%の関税を発効後毎年2%ずつ引き下げ、3年で撤廃

・豚肉および鶏肉:協定発効後、関税撤廃

・乳製品:@粉乳、練乳、ホエイ、バター、一部のチーズなどは協定発効後6年間は関税を現行の6%に据え置き、
     7年目から1%ずつ引き下げ、12年目に当たる2017年に無税とする。A脱脂乳、クリームなどは3年で
     撤廃、Bヨーグルトなどは発効後、関税撤廃−などとなっている。

 また、関税削減期間内には、FTA締結国からの各乳製品輸入量の半期ごとの実績により特別セーフガードが発
効されることも含まれている。



チリからNZへの輸出品目の94.5%が無税

 一方、協定発効後はチリからニュージーランドに向けた輸出品目の94.5%が無税となり、豚肉、鶏肉、冷凍およ
び加工ウニ、ハチミツ、リンゴ果汁、木材などが対象品目となる。

 また、チリからシンガポールへの輸出についてはすべての製品が無税となり、これにより最も恩恵を受けるのが
リキュールとなっている。

 今後、チリはインド、中国、日本とのFTA関係の交渉が控えており、特に中国と日本については乳製品部門に
おける潜在的可能性に大きな期待を寄せているとみられる。



2004年の乳製品輸出は量、額ともに大幅増

  チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2004年の乳製品輸出量は前年比30.6%増、輸出額は53.6%
増といずれも前年を大幅に上回った。主要な輸出先はメキシコで、全輸出額の60.3%を、また、粉乳が主な品目で
あるキューバが11.7%を占めた。一方、主要な輸入相手先はメルコスルのアルゼンチン、ウルグアイおよびブラジ
ルが全輸出額の65%を占め、これに米国、ニュージーランドが続いた。



 



【ブエノスアイレス駐在員 横打 友恵 平成17年7月20日発】 



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