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欧州委、今後のBSE対策の指針を示す


BSE陽性牛の頭数減少を踏まえ、将来の施策の選択肢を示す

  欧州委員会は7月15日、今後のEUにおける伝達性海綿状脳症(TSE)対策について、加盟各国、欧州議会お
よび関係者と議論するための資料として、「指針(Roadmap)」を承認した。

 これは、これまで実施してきたBSE対策の効果により、BSE陽性牛の頭数が減少し続けていること(海外駐
在員情報7月20日号、通巻681号参照)を踏まえ、EUにおいて実施しているBSE対策に関する特定危険部位
(SRM)の除去月齢、動物性たんぱく質の飼料給与禁止措置(フィードバン)、監視措置、BSEリスクに基づ
く第三国のカテゴリー分け、関連牛のとうた、イギリスからの牛肉輸出規制などについて、以下のとおり短・中期
的(2005〜09年)に将来実施する施策の選択肢を示すものである。
 
 なお、長期的(2009〜2014年)には、そのときの技術および新しい科学知見に基づき、さらに修正を行っていく
としている。



短・中期的な改正

・SRM
  SRMに関しては、引き続きその確実な除去により、消費者保護のレベルを確保・維持しながら、科学的知見
 に基づきSRMとする部位や対象月齢を変更するとしている。

  EUでは2000年10月から、全加盟国の家畜の可食部からSRMの除去を義務付けている。現在、EUでは、扁
 桃、腸(十二指腸から直腸まで)および腸間膜はすべての月齢において、また、頭がいと脊柱(注1)は、12カ
 月齢超の牛においてSRMと規定している。なお、イギリスについては、ほかの加盟国より規定内容が厳しくな
 っている。
 
  このような中、欧州食品安全機関(EFSA)は5月26日、同機関の生物学的危険に関する科学パネルが実施
 した、SRM除去の月齢の制限に関する評価を公表した。同パネルは、SRMの除去月齢を30カ月齢以上に引き
 上げることについては、相当な水準ではあるが、完全に安全な水準ではないと結論付けるとともに、その代わり
 、SRMの除去月齢を21カ月齢(注2)に引き上げることを提案した。これは、2001年からモニタリングが始ま
 って以降、BSEが発見された最も若い牛(28カ月齢)の月齢を下回るもので問題ないと結論付けている。
 
  こうした中、欧州委員会は7月19日、EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会に、SRMの月齢を12カ月
 齢から引き上げる提案をしている。

・フィードバン
  フィードバンに関しては、一定の条件が整えば、対策を緩和するとしている。
 EUでは、2001年1月1日以降、家畜への動物性たんぱく質を飼料に利用することを禁止している。現在のとこ
 ろ、本措置は極めて小さな骨片なども飼料中に存在してはならないこととなっている。しかしながら、現状では
 、野生動物の骨片がてん菜に付着している場合があり、これが飼料(ビートパルプ)に混入することがある。こ
 のような骨片の混入についてはそれを完全に防ぐことができないという問題がある。このような自然環境での混
 入については、リスク評価に基づきそれを許容するかどうかについて検討することとしている。

  魚粉についても飼料に使用することは禁止されているが、反すう動物以外の動物への使用再開を提案している。

・その他
  BSEリスクに基づく第三国のカテゴリー分けについては、本年のOIE総会で承認された3区分法に基づき、
 現在のEUにおけるBSE対策の移行期間が終了する2007年7月1日前に実施するとしている。

  サーベイランスについては、BSE検査の頭数を削減しつつ、その対象を絞ったより効果的なものにする。ま
 た、BSE関連牛を即時にとうたすることについては、これを中止し、と畜時のBSE検査などに切り替えると
 している。
 
  また、イギリス産の牛肉・牛肉製品のEU加盟国および第三国への輸出を、一定の要件を満たすものに限定す
 る現行の対策の解除を検討している。この件に関しては、2005年の第4四半期に検討を開始できるものとしてい
 る。


 (注1)頭がいは、下顎骨を含まず、脳および眼球を含む、脊柱は、棘突起(尾椎、頚椎、胸椎、腰椎)、横突起
   (頚椎、胸椎、腰椎)、正中仙骨稜、仙椎翼は含まず、背根神経節および脊髄を含む。

 (注2)病原体の研究によると、中枢神経系での異常プリオンは、潜伏期間の4分の3を過ぎてから検知可能であ
       ると言われている。科学パネルが提案した21カ月齢は2001年のサーベイランス開始以降、BSEが発見され
       た最も若い牛の月齢である28カ月齢の4分の3に当たる。



【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成17年7月19日発】 



  

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