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初めてブロイラーにルールを設定 欧州委員会は6月1日、「食肉生産のために飼養される鶏の保護のための最低条件を定める理事会指令(案)」 を公表した。これによれば、飼養者は、ブロイラーの飼養密度を1平方メートル当たり生体30キログラム以下と しなければならないとしている。なお、鶏舎内のアンモニア濃度、気温や湿度などの一定の条件を満たす場合は、 ブロイラーの飼養密度を、1平方メートル当たり生体38キログラム以下とすることが認められることとなってい る。 EUには、飼養家畜全般に適用されるもののほか、豚や採卵鶏などに特化した家畜福祉に関する指令は既にあ るが、ブロイラーに特化したルールは今回のものが初めてである。 義務的表示制度の創設を想定 また、本指令案の承認後2年以内に、欧州委員会は、動物福祉の基準にのっとって生産された鶏肉やその製品 に関する義務的表示制度の導入の可能性に関するレポートおよび指令の改正案を欧州理事会および欧州議会に提 出することとしている。 この制度の導入は、消費者の確実な商品選択と、EU産のものと安価な輸入鶏肉などとの差別化に寄与すると 考えられる。 順守すべき要件 飼養密度のほか、ブロイラー生産者が守るべき要件の概要は以下のとおり。 ・給水器は飲みこぼれが生じないように設置維持されること。 ・鶏がいつでもえさを食べられるようにしておくこと。また、食鳥処理時刻の12時間前より早く断食させないこ と。 ・すべての鶏にいつでも乾燥した敷料を使用すること。 ・加温し過ぎないようにすること。また、除湿のため、十分な換気を行うこと。必要な場合は加温装置を組み合 わせること。 ・音は最小限の水準とすること。換気扇、給餌機または他の装置は、それらが発生する音が最小限となるように 設置され、運転され、かつ、維持されること。 ・照明を点灯する場合は、鶏舎の床面全体が、鶏の目の高さの位置で20ルクス以上の明るさとなるようにするこ と。また、当該鶏舎に導入後3日間、および食鳥処理のための出荷前3日間は、鶏舎内の明暗を24時間周期と し、消灯時間を最短連続4時間、合計で最短8時間とすること。 ・すべての鶏について最低1日2回の監視を行うこと。鶏との距離が3メートル以内で監視が行えるように手順 を定めること。重度の傷があるか、歩行困難など健康状態が悪く、苦しんでいるような場合は、適切な治療ま たは迅速なとうたを行うこと。 ・出荷後、新たな群を導入する前に、鶏舎、装置または鶏に接する道具を、完全に清掃し消毒すること。 ・以下の記録を最低3年間保管すること。@導入した鶏の数、A鶏の導入元、B飼料の配達日、量および種類、 C実施された治療内容、D毎日の死亡鶏の数、また、判明している場合はその原因、E毎日の鶏舎内の最高気 温および最低気温、F出荷時の平均体重、G出荷羽数、と畜場に到着した際にすでに死亡しているブロイラー の数。 ・治療や診断などの目的以外での外科的処置の禁止。ただし、羽食などを防ぐ目的であれば、一定の条件の下、 くちばしの切断を行うことなどは認められる。 動物福祉団体は不満を表明 これに対し、EUにおける動物福祉に関する団体である「動物福祉のためのユーログループ(Eurogroup for Animal Welfare)」は、欧州委員会がブロイラーに係る動物福祉の規則化を決定したことを歓迎はするものの、 今回の案の内容は現在行われている飼養管理の内容を反映したものに過ぎず、ブロイラーの福祉向上のためには 全く不十分であるとしている。 【ブリュッセル駐在員 関 将弘 平成17年6月8日発】
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