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4月末にも発生 ベトナムでは2003年の末に北部のハタイ県と南部のメコンデルタで鳥インフルエンザが発生し全国的に拡大し ていった。これに対して政府は、殺処分による対策を実施し、2004年の3月末にはいったん、制圧宣言を行った。 しかしながら、同年7月には再び発生が確認され、その後も散発的に発生した。国際獣疫事務局(OIE)への 報告では今年2月の発生報告が最終となっているものの、5月中旬に開催された鳥インフルエンザ国家対策委員 会では、北部山岳地帯のイエンバイ県などで今年の4月末にも小規模ながら発生が確認されている。 なお、ベトナム政府は2003年末から2004年3月にかけての発生を第一波とし、その後の発生を第二波としてい る。第一波では家きん全体の16.8%に相当する4,390万羽が死亡または殺処分されており、鳥インフルエンザの 発生は全国74の県や都市のうちの57に及んでいる。第二波に関しては、2004年4月から2005年の2月までで35の 県や都市で150万羽が死亡または殺処分されている。 続く人的被害 世界保健機構(WHO)の取りまとめによると、6月8日までにベトナムでの鳥インフルエンザの罹患者が79 人確認され、そのうち38人が死亡している。同様にタイでは17人の罹患者に対して12人が死亡し、カンボジアで は罹患者4名が全員死亡している。ベトナムの死亡率は他の発生国と比べて低いものの、人数が多く、昨年の暮 れからの死者は罹患者52人に対して18人となっている。 中には家族などの集団(クラスター)での発生が認められ、WHOはウイルスの変異により、死亡率は低下し たものの、人と人の間での感染性が高まったのではないかと懸念している。 小規模生産者に課題 同国では、約800万戸の農家が2億5千万羽の家きんを飼養しているとされるが、被害を受けた小規模生産者 の飼養形態は、ほとんど鳥インフルエンザ発生以前と変わらない状況とされている。これは、殺処分によって失 われた収入を取り戻すため、再度飼養を開始するものの、殺処分の補償金がわずかでしかないため、新しい施設 を作ることができず、結局は家屋に隣接する庭や空地で放し飼いにするしか方法がないためと言われている。 所有する家きんの殺処分を受けた生産者が、再び家きんを飼養するためには、ひな鳥の購入などに300万ドン (21,000円:1ドン=0.007円)〜400万ドン(28,000円)の借入金が必要となり、これに衛生的な養鶏施設を建 設するとなると、さらに資金が必要となるとされている。 家きん飼養の禁止対象都市を拡大 ベトナム農務省は4月19日、鳥インフルエンザ対策の一環として、これまでベトナム南部のホーチミン市だけ に適用していた、都市部の人口集中地域での家きんの飼養禁止を、ハノイ、フエ、ダナンなどほかの14都市にも 適用することとした。これは、人口集中地域から家きんを遠ざけることによって、人への感染の危険を避けるた めの措置としている。また、水鳥の放し飼いについても禁止するとしている。これらのほかに、ワクチンの強制 接種を8月から実施し、10月上旬には発生の危険の高い地域にまで拡大したいとし、また、これに要する経費の 630万ドル(6億7,410万円:1ドル=107円)は国庫が負担するとしている。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成17年6月9日発】
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