ALIC/WEEKLY


鳥インフルエンザへの警戒強化(フィリピン)


未発生ながらも強まる警戒感 

  東アジアにおける鳥インフルエンザの発生は、2003年12月の韓国での発生報告を最初に、2004年に入ってベ
トナム、日本、台湾そしてタイなどとアジア各地で報告されるようになった。中でもベトナムとタイでは、大
規模な殺処分が行われるとともに人的被害も発生しており、特にタイでは鶏肉産業が大きな影響を受けて現在
に至っている。このような中で、フィリピンは近隣のシンガポールとともに未発生国の地位を保っている。フ
ィリピン政府は、このような状況を自国の鶏肉産業発展のチャンスととらえると同時に、常に鳥インフルエン
ザ侵入の瀬戸際にあるものと認識し、警戒を高めている。


地域サミットなどの開催

 4月20日、フィリピン農務省は、保健省と共催で、政府地方機関および民間部門の同国ブロイラーインテグ
レーターズ協会(PABI)とともに第1回鳥インフルエンザ対策地域サミットを首都マニラの北西に位置す
るパンパンガ州のマガラングで開催した。会議の中心は鳥インフルエンザ防疫プログラム(AIPP)の承認
と特別対策本部の設置であった。AIPPは4段階からなり、第1および第2段階は家きん産業に関して輸入
規制など防疫と疑い例発生などに対する対応であり、第3と第4段階は人間への感染に関する対応で構成され
ている。

  また、5月4日には、フィリピン南部のミンダナオ島ダバオ市において、農務省と保健省合同で「南部ミン
ダナオ地域サミット」を開催した。この会議では、ミンダナオ島が同国の重要な農産物生産地(Food basket)
であり、また、家きんとトウモロコシが地域経済にとって重要であるとした。このため、鳥インフルエンザの
防疫の重要性を強調するとともに、AIPPの主要対策の一つに、コンパートメンタリゼーションがあること
を挙げ、周辺地域で鳥インフルエンザが発生した場合には同島を他の地域から分離して清浄地域として取り扱
う意向も表明した。

  5月24日、農務長官は、鳥インフルエンザ発生国からの生鳥や家きん製品の輸入禁止の継続の必要性を訴え
るとともに、環境・自然資源省の公園・野生動物局と野生の鳥が生息する湖や貯水池の監視を注意深く行う計
画を表明した。また、畜産局の特別対策本部と地方行政機関及び民間部門は協力して家きん施設の監視を全国
的に行うとともに、空港及び海港での監視を24時間体制で行うとした。

  6月8日、農務長官は、畜産局と食肉検査所に対して、中国やその他の鳥インフルエンザ発生国からの家き
ん製品が市中で発見された場合にちゅうちょすることなく直ちに押収するよう指示した。また、4大経済団体
である、フィリピン商工会議所、同華人商工会議所、同スーパーマーケット協会および同ホテル・レストラン
協会に対して、これらの製品を扱わないよう、国の防疫体制への協力を要請した。


増加する日本への鶏肉輸出
 
  フィリピンから日本への鶏肉輸出は、周辺国での鳥インフルエンザ発生を機に増加しており、2003年の日本
への輸出実績は、日本の通関統計上、冷凍鶏肉を中心に26トンに過ぎなかったが、2004年には1,017トンとなっ
た。2005年に入ってもその傾向は続いており、1〜3月の日本のフィリピンからの鶏肉輸入量は732トンとなっ
ている。この状態が継続すれば、年間では前年以上の実績が見込まれる。特に、ミンダナオ島には日本向けに
鶏肉製品を製造する企業があり、昨年7月から月間80トンベースで輸出を行っている。



【シンガポール 斎藤 孝宏 平成17年6月16日発】


 


元のページに戻る