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昨年調査時と比べ、酪農家、経営に積極性増す デイリー・オーストラリア(DA)は6月6日、酪農産業の現状と見通しと題する調査結果を発表した。この 調査は、2002年前半から03年後半にかけて発生した100年に一度といわれた大干ばつにより大きな被害を受けた 酪農家の経営の現状と将来の見通しを把握し、今後の酪農産業の発展に役立てる目的で行われた。今回の調査は 、昨年に続き2回目になる。 昨年の調査結果では、多くの酪農家が将来に不安を感じ、新たな投資を避ける傾向にあったのに対し、今回の 調査結果では、そういった酪農家の数は全体の3分の1程度に減少し、生乳生産を拡大していくと答えた酪農家 が半数以上に上った。 この背景としては、好調な乳価と天候の回復により、生乳生産も徐々に回復し、酪農家の収入も増加してきて おり、全体としては、酪農家が自信を回復してきたことによる。 ただし、依然として干ばつが継続しているところもあり、全地域での生乳生産の回復というわけにはいかず、 また、離農者の割合も高いことから干ばつ前の水準に回復するには今後3年間は要するとみている。調査結果の 要点は以下のとおり。 酪農家の将来見通し 酪農家の将来見通しについては、次の表のとおり、2004年は、酪農家の多くが将来に不安を感じ、経営規模を 現状維持、あるいは縮小させると答えた酪農家が多かったが、2005年では、規模の拡大を望む酪農家が多くなっ た。
○2007/08年度までに生乳生産量を増加させることを意図する酪農家のシェアおよびその概要: ・2004/05年度の生乳生産量の53%を占める(2004年調査時42%) ・酪農産業の将来に明るい展望を持つ ・多頭飼育 ・酪農家の年齢が比較的若い |
○現状維持または減少を望む酪農家のシェアおよびその概要: ・2004/05年度の生乳生産量の35%を占める(2004年調査時43%) ・飼養規模や酪農家の年齢の範囲は幅広い |
○離農を検討している酪農家のシェアおよびその概要: ・2004/05年度の生乳生産量の12%を占める(2004年調査時15%) ・酪農家が比較的高齢 ・飼養規模が小さい ・理由は多様で、苦しい経営状況や過重な仕事量のほかに酪農業の資産価値の改善で経営の売却が有利になったことなど |
生乳生産の見通し ・現状では、干ばつの被害を受けた酪農家のうち34%が、生乳生産量が回復したと答えている(2004年調査時11 %)。 ・生乳生産量全体の3分の2を占める酪農家が、現時点では干ばつの被害から回復しているもしくは干ばつの被 害を受けていないと答えている(2004年調査時では80%の酪農家が干ばつの被害を受け、そのうち55%が干ばつ 以前の生乳生産量に戻っていないと答えていた)。 ・しかし、全体として、干ばつによる生乳生産への影響は、今後3年間は続くと見られる。 ・干ばつからの回復状況には地域差があり、干ばつの被害から急速に回復した酪農家もあるが、ニューサウスウ エールズ州やクインズランド州では回復が遅れている。 ・2005/06年度の生乳生産量は、2004/05年度に比べ0〜2%増加の見込み。 ・半数以上の酪農家は経営規模を拡大して行こうという姿勢を見せているが、反対にやめて行く酪農家もいるの で、生産量が急激に増えることは難しい。 ・中期的には、毎年2%程度の生乳生産の増加が見込まれる。ただし、安定した生乳価格や飼料価格、用水の確 保、良好な天候の継続が必要となる。
市場の見込みなど ・短期から中期的には、国際市況は堅調に推移する見込み。 ・2005/06年度の生産者乳価は、2004/05年度と同様、為替相場は、豪州ドル下降予測など。
【シドニー駐在員 井上 敦司 平成17年6月22日発】
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