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アジア地域AI対策会議開催 国連食糧農業機関(FAO)および国際獣疫事務局(OIE)の共催により、2月23〜25日の3日間、ベト ナム南部の主要都市であるホーチミン市でアジア地域AI(鳥インフルエンザ)対策会議が開催された。同会 議にはアジア地域の関係各国に加えて日本をはじめとする各種支援を行っている各国代表者が参加した。 同会議では昨年の同時期に開催された第1回会議以降、再発生が確認された各国の現状と対策が報告された ほか、支援国・機関などの代表による見解表明、詳細テーマごとの分科会の開催と勧告などがなされた。今回 の会議で各国の関心が高かったのは家きんへのワクチン使用の取り扱いと水鳥、特にアヒル飼養に関する対処 方針であった。以下は主催者代表の発言要旨。 ○ 世界保健機構(WHO) (H5N1型)AIが人に対し高い伝染性を獲得した場合、その影響はSARSを凌ぎ、経済的損失も計り知 れないとし、特にアヒル飼養について警告するとともに、家畜の混飼と住環境への密着の危険性、非衛生な市 場(いわゆるウェットマーケット)形態の改善などを提言。 ○ OIE アジア地域でのAI発生についてはWHOと同様の見解を表明。一方で今年4月にパリで開催予定の年次総 会で家畜衛生に関する新たな各種ガイドラインの規定と新たな概念である「コンパートメンタリゼーション( 区画分割)」の定義の確定について期待感を表明した。 ○ FAO AI対策に関しては上記二者と同様の見解を繰り返し表明したほか、援助国に対し発展途上国における獣医 療インフラ整備のための協力要請を行った。 ベトナムのAIを取り巻く現状 第2回AI対策会議の開催地に選定されたベトナムでは、ブロイラーの輸出量がASEAN域内最大のタイ 同様大きな被害を受けている。会議で提供された資料によると、2004年の国全体の家きん飼養羽数は2億6,100 万羽、うち1億9,200万羽が鶏で6,880万羽がアヒルおよびガチョウとされている。同国が第1次発生と位置付 けている2003年12月27日から2004年3月30日までの死亡を含むとう汰羽数は4,390万羽で、この総飼養羽数の 16.8%に相当する(うち鶏3,040万羽、アヒルなどの水鳥1,350万羽)。一方、第2次発生と位置付けられる2004 年4月中旬から今年2月中旬現在までの死亡、とう汰羽数は同国で多くの食肉に供される鳩を含めておよそ150 万羽とされ、第1次発生から比較して大幅に縮小しているとされ、この違いは同国の清浄化のためのとう汰方 針の変更によるところが大きい。また全期間を通して発生時期と場所が特定箇所に集中していることなどから、 同国におけるAI発生の理由として周辺国からの不正輸入、大河川流域での野生鳥類(特に渡鳥)からの感染、 といった可能性が高いと指摘している。 また、主な清浄化対策としては感染した家きんおよび家きん由来製品の移動制限があり、第1次発生時は県 境を越えての移動制限、第2次発生では発生農場から半径3キロメートル以内の移動制限とされた。 一方、WHOなどによる、感染鳥の臨床症状を呈しにくいアヒルがAI感染源として重要な役割を果たして いるという勧告を受けて、政府は2月3日、アヒルの飼養を禁止するとし、同国首相は同7日、水田や用水路 でのアヒルの放し飼いを制限すると発表している。また、これに関連してアヒル飼養が盛んなホーチミン市で は同2日、全羽とう汰を発表している。ただしアヒル肉に対する需要が高い同国でこれら対策を実行するに当 たっては相当の困難が予想される。 家きんへのワクチン使用については限定的に使用試験を行っており、清浄化対策の手段として検討を進めて いる。具体的には農業農村開発省が家畜および公衆衛生の専門家を招集してワクチン利用に関する評議会を設 立している。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成17年2月24日発】
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