ALIC/WEEKLY


ブラジル、遺伝子組み換え体の解禁に向け議会が承認


連邦議会においてバイオ安全法案が通過 

  3月2日ブラジル連邦議会下院は、遺伝子組み換え体(GMO)に関連したすべての活動に係る安全
規定および監視の仕組みを定めたバイオ安全法案を賛成352票、反対60票で可決した。本法案は2003年
10月から審議され、2004年2月に下院を通過し、同年10月には修正された法案が上院で可決されたため、
再び下院で審議されていた。あとは大統領の署名を残すのみとなっている。

 法案は当初下院の通過時、国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)の権限が弱かったが、上院で
以下のように強化され、再び戻った下院で修正案は出されたものの、修正されずそのまま可決された。
その際GMOに関しては、大きな争点にはならなかったといわれている。なお法案には、ヒト胚性幹細
胞の研究解禁に関する条項も盛り込まれている。

 GMOに関する主な内容は以下のとおり。

@CTNBioはGMOの研究、栽培、販売などに関する許可を一元的に管轄

AGMOを含む製品は、表示を義務化

B大統領府に属し11名の関係閣僚からなる国家バイオ安全審議会(CNBS)が結成され、GMOの商
 業的利用に関して最終判断を下す−などとなっている。

 またCNTBioは、GMOの栽培・販売などに関する許認可権を一手に掌握するとともに、ブラジ
ル再生可能天然資源・環境院(IBAMA)が所管していた環境アセスメントの必要性についても最終
決定を下す権限を得た。

 なお関係機関の反応は次のとおりであるが、農務省は冷静に対応しているようである。



○農務省(MAPA:3月4日)

 (ブラジルは暫定令(その後法律第11092号となる)により、2004/05年度のGM大豆栽培などに限っ
 て条件付きで承認しているが)バイオ安全法案が下院を通過したといえども大統領が署名するまで、
 GM大豆の栽培などの条件である政府が定めた制限を順守するという宣誓書は提出義務である。なお
 大統領の署名後に、宣誓書の必要性の有無については検討する。


○環境省(MMA:3月3日)

  本法案は、CTNBioにGMOの商業的許可について排他的に権限を与えたことにより、環境・
 畜産・農業・漁業・保健の各分野で行動する政府機関を二次的な立場へ追いやった。
  環境アセスメントの必要性を判断する権限をCTNBioに与えたことにより、環境に与えるイン
 パクトを評価する国家権限をはく奪したことになる。GMOの利用に係る決定過程に重大なアンバラ
 ンスが生じ、いまだ生態系に対する影響が解明されていないテクノロジーに対して、必要な予防措置
 を欠くことになる。
  国会の憲法的権限を認識した上で、環境省は法案に含まれる潜在的環境リスクをブラジル社会に示
 す義務を感じている。


○全国農業連盟(CNA:3月4日)

  法案は、GM大豆などを規定するため農業分野には有利である。高い競争力をもたらすバイオテク
 ノロジーを導入すべきか否かの議論が収束することになる。
  これまで司法は、GMOの栽培などに対するCTNBioの決定を、各省が否定する権限があると
 してきたが、今後はCNBSのみがその権限を有する。バイオ安全法案により、これらの疑問は過去
 のものとなった。


○消費者保護院(IDEC:3月3日)
 
  可決された法案のうちGM製品に関する部分に対し、IDECや全国消費者保護民間団体フォーラ
 ムに属す団体は拒絶の意を表明する。残念ながら国会およびルラ政権は消費者の健康に対する権利お
 よび健全な自然環境を無視した行為を明らかに示し、多国籍企業の主張に協調した。
  法律が成立してもIDECが提訴したトランスジェニックを禁止する司法決定が継続され、その効
 力が司法によってのみ消滅するものと理解している。また環境アセスメントや環境への影響を調査さ
 せることは憲法によって定められており、本法案で消滅するものではない。





【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成17年3月9日発】 



元のページに戻る