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カンボジア、家畜移動監視の強化が課題


2004年度家畜生産・衛生報告会開催

  カンボジア農林水産省は2月24〜25日の2日間、家畜生産・衛生局(DAHP)年次会議を開催し、2004
年(2003年12月15日〜2004年12月15日)の畜産情勢報告を行った。

  市町村から中央政府に集約され推計・修正が加えられた当該期間の家畜飼養頭数は牛が約304万頭で、う
ち役用が131万頭、繁殖用が82万頭、全体で前年比1.8%増加。水牛は65万頭のうち役用33万頭、繁殖用21万
頭、全体で1.5%の減少とされている。豚は243万頭のうち繁殖母豚が26万頭、全体で5.4%の増加とされ、母
豚頭数では19.4%と大幅に増加している。家きんでは1,399万羽で前年比12.6%減少とされた。



中国からの援助・投資が拡大

 同国では鶏や豚などの中小家畜を中心に外資の参入などによる企業経営がわずかではあるがみられる。農
林水産省はこれら企業畜産に対し豚、鶏農場を中心に14農場を指定農場として登録している。一方では、タ
イの大手インテグレーターであるCPグループの飼料工場などが稼働しているものの、年間飼料生産量は国
全体でも7万トン程度といわれ、1千万トンを超える隣国タイに比べわずか1%にも満たない。このような
状況の中、中国からの畜産分野への援助や投資が拡大しており、報告によると首都プノンペンを中心とした
周辺地域で中国との協力で30カ所にバイオガスプラントが建設されたとされるほか、3カ年計画で中国カン
ボジアの共同出資による種豚牧場整備が行われているとされる。またタイ国境に近いバタンバン州では両国
の合弁企業であるホンロン投資開発社が精米工場を核として、畜産を含めた大規模農業生産団地の整備を計
画している。このように近年の貿易量の増大とともに中国の影響力の拡大がうかがえる。



首相、不正輸出入防止対策を発表

  タイや中国をはじめとした外資の参入による企業畜産が開始しつつある一方、大部分は依然役畜としての
大動物飼養を中心としたバックヤードファームである。

 近年は近隣諸国と比べ半額程度ともいわれる牛・水牛の取引価格のため、大動物が密輸などにより流出し
ている。このため同国の主要農産品である稲の生産性低下が懸念されている。またこれらは零細家計におけ
る資産の緩衝機能を併せ持っており、政府は、牛や水牛の周辺国への流出を食い止めるため、また逆に中小
家畜の不正輸入による家畜疾病の国内でのまん延を防止するため、国境地域などでの家畜移動監視の強化を
緊急の課題としている。アジア地域で猛威を振るう鳥インフルエンザ対策としては昨年12月31日付けでベト
ナムおよびタイからの家きん類の輸入を停止しており、DAHP局長は両国の清浄性が国際機関により確認
されるまでこの措置を続けるとしている。
 
 これに関連してフン・セン首相は昨年12月22日付けで国境措置の強化のため密輸摘発に際し報償制を導入
するとしたほか、2月には、繰り返し家きん類の輸出入禁止の徹底を指示している。



家畜疾病対策の現状
     
  また、同国では従来世界銀行の援助などにより不足する家畜衛生の専門家を補うため農村獣医(VAHW)
の養成を行っており、専門家数は前年比2割の増員とされた。また家畜疾病発生状況としては口蹄疫に罹患
したのは、牛34,109頭、水牛4,399頭、豚1,181頭とされ、うち牛146頭、水牛4頭、豚107頭がへい死したと
される。これに対しワクチン接種状況は牛2,836頭、水牛180頭、豚2,914頭とされた。

 同じく出血性敗血症の発生状況は牛4,135頭、水牛1,665頭、豚1,809頭、うち牛284頭、水牛349頭、豚250
頭がへい死したとされる。ワクチン接種状況は牛約95万5千頭、水牛約27万2千頭、豚約9万頭とされた。

 なおこのほかに、政府の認定農場であり、肥育牛の輸出承認を唯一受けて2004年には1万頭あまりの牛・
水牛を生体で主にマレーシアなどに輸出したMong Riththy農場では、農家から買い上げた輸出用牛・水牛の
すべてに口蹄疫などのワクチン接種を行っている。




【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成17年3月10日発】 

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