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アルゼンチン北部の国境地帯における口蹄疫監視強化


衛生監視のためピックアップトラックを配置 

 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は、同国北部のパラグアイおよびボリビアとの国境地帯に
おける口蹄疫侵入防止を強化するため、衛生監視・活動用ピックアップトラック29台を配置することにしていた
が、4月13日に農牧水産食糧庁(SAGPyA)の次官などを招いてこれらトラックの引き渡しのセレモニーが
、ブエノスアイレス市で開催された。

 今回の措置は、州農業支援プログラム(PROSAP※)の枠組内にある「アルゼンチン口蹄疫監視・予防お
よび家畜衛生・監視活動向上プロジェクト」に基づき実施され、このプロジェクトには2003〜06年で1,080万ド
ル(約11億4,500万円、1ドル=106円)を投資する予定となっており、このうち820万ドル(約8億6,900万円)
は国際復興開発銀行(IBRD、世界銀行)からの融資、残り260万ドルはSENASA(約2億7,600万円)が
支出する。

 なお4月26日には、米州開発銀行(IDB)がPROSAPに対し、2008年までで2億ドル(約212億円)追
加融資することになったと、経済生産大臣およびSAGPyA長官が発表している。

 ※:本紙通巻第611号を参照。
 


過去の口蹄疫発生により年間3億ドルを失う

  SENASAはこのプロジェクトの中で「2001年に発生した口蹄疫により牛肉輸出が一時停止し、国際市場で
3億ドル(約318億円)以上を失った。アルゼンチン生産者が「口蹄疫ワクチン不接種清浄国」の大市場へ牛肉
を輸出できるようになれば、牛肉輸出量の増加やトン当たり輸出価格が上昇すると考えられるため、「口蹄疫ワ
クチン接種清浄国」のステータスを維持することが重要であり、それにより失った市場を回復できる」とその意
義を示している。

 なお、このプロジェクトの具体的な目的は以下のとおり。

1 口蹄疫やその他の疾病(外来や未知、地域を限定した疾病)の発生について、それらを検出しかつ押さえ込
  み、適切な予防措置の体制を早急に整えること

2 病気の発生率、発生状況を基にして、疾病の重要度およびその後の事態の推移を判断すること

3 病気の封じ込めや撲滅など各疾病の状況を考慮した対策の結果を評価すること

4 第三国および国際機関に対し衛生状況の提示を容易にするため、重要な情報をSENASAに迅速に集約で
  きるシステムを構築すること

5 競争市場に輸出が許可される衛生状況や品質を保証するまたはコストや品質悪化を減少させることを保証す
  るシステムを組み入れていくこと 

6 予防接種活動または発生および移動のコントロールについて、SENASA地方事務所を通して統括するこ
  と

7 アルゼンチンに存在しないような動物起源の伝染病または病原体の侵入を回避すること

 −などとなっており、プロジェクトのメニューには畜産関係者(職員や生産者など)に対する研修も含まれて
いる。

 なおSENASAによれば、さらに16台の自動車、情報の集約化や管理の迅速化を図るため450台のコンピュー
タも導入したとのことである。



◎アルゼンチン、大豆取引に係る基準を改定

  SAGPyAは決議第220/2005号(2005年4月19日付け)により、大豆取引に係る基準を改定した。

 SAGPyAは昨年9月、決議第801/2004号により、輸出製品の競争力を高めるため品質を向上させることを
目的に「大豆の品質基準」を改正していた(本紙通巻第644号を参照)。

 その際、販売ロットの分類および精算を容易にするため、“取引において緑色の大豆穀粒の含有基準を5%、
それを超える場合は1%ごとに0.5%が(筆者注:契約価格から)割り引かれ、含有率10%までが許容範囲であ
る”とされていた。

 しかし生産部門から割引率が高すぎるとの意見がSAGPyAに出された結果、含有基準は同じく5%にし、
それを超える場合は1%ごとに0.2%が割り引かれ、含有率15%までが許容範囲とする改正がなされた。

 なお許容範囲の上限となっている含有率15%は当該決議の有効後、90日間のみの限定的な措置となっている。
これについてSAGPyAは、「北部地域の大豆に緑色穀粒が多かったことが含有量の上限改定となった。本
制度は今年が初年であったことをも考慮し限定的な措置した」との回答であった。




【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成17年4月27日発】 



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