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アルゼンチン、牛肉枝肉価格を固定


 
枝肉価格を8月後半の平均価格に

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は9月15日、牛肉小売価格の上昇を抑制するため、新
たな協定を結んだことを発表した。

 実際には、経済生産省下にあるSAGPyAと経済政策庁の両長官が、家畜取引業者、食肉パッカー
および大手スーパーマーケット(6社)の合計15組織の代表と、牛肉枝肉価格もしくはカット肉のキロ
グラム当たりの価格を、合意署名日から90日間、本年8月後半(15日間)の平均価格に維持固定し、さ
らに市場に対し正常に供給していくことが約束された。(なお9月26日には、2つのスーパーマーケッ
ト協会(AUS、CAS)が、12部位について同様の協定を結んでいる)。

 SAGPyAは3月15日、上昇傾向にあった牛肉小売価格を国民の購買力保護のため、骨付きバラな
どの5部位について1月最終週から2月第1週の価格水準まで戻し、合意署名日から90日間維持するこ
とを食肉関係5組織と結んでいた(畜産の情報【海外編】2005年5月号p21〜22参照)。しかし、この
協定は6月15日で終了しており、政府は新たに小売価格上昇に対する抑制措置を模索していた。

 本協定に至る途中の7月25日に決議第406/2005号が公布され、乳製品に係る輸出税が引き上げられた
ため(本紙通巻第683号を参照)、畜産関係者では牛肉に課税されている輸出税5%も引き上げられる
のではないかと懸念する声も聞こえていた。しかし、合意価格を協定対象期間途中で維持できないとし
た乳業部門とは異なり、今回の協定前文で政府は「(3月15日の)協定は、当該カットの価格について
肯定的な効果を上げた」ことや「(国民、特に低所得者層の購買力を維持する)目的に対し、民間部門
の代表者は政府に協力する態度を維持している」ことを評価しており、乳業部門とは違った方針を示し
たと思われる。

 一方この措置に対し、生産者団体であるブエノスアイレス州およびラパンパ州農牧連合会(CARB
AP)は、政府が価格形成に介入することは、過去の事例から失敗することが証明されており、短期的
に見て10月下旬に行われる選挙対策のものでしかなく、この措置により農業生産の拡大、強いては国家
および経済の成長に必要な投資意欲を低下させることになる−などとする趣旨のプレスリリースを出し、
また他の生産者団体は、需給状況による価格動向を反映させなくなるため、「競争保護法(法第22262
号)を無視してもよいのか」と非難している。



牛肉小売価格はほぼ横ばい

 国家統計局(INDEC)が公表する生活基本食料品のうちの牛肉小売価格は、本年当初に見られて
いたような上昇は収まり、3月以降は前協定の効果のためかほぼ横ばいの状況となっているが、「1月
最終週から2月第1週の価格水準」までは戻っていないところである。





 なお食肉専門店やスーパーマーケットなどの小売部門は、パッカーから半丸枝肉を購入しカット販売
しているため、論理的には今回の協定により牛肉価格が全般的に抑制されることになるが、実際どのよ
うに値が動くのか注目される。



◎ブラジル農務省、WTOの決定を祝す

 ブラジル農務省(MAPA)は9月12日、「ブラジル産鶏肉に対して、世界貿易機関(WTO)の有
利な決定を祝う」と題するコミュニケを発表した。これは塩分を含む鶏肉に関するEUとの紛争におい
て、WTOが“EUは当該鶏肉の分類を変更すべきである”としたブラジルに有利な決定を下したこと
による。

 この紛争とは、EUが塩分を含む鶏肉の関税分類を変更し関税を倍以上※に引き上げたため、輸出が
不可能になったブラジルおよびタイなどが、紛争処理小委員会の設置を要請(ブラジルの要請日は2003
年9月19日)し審理されていたもので、本年9月12日に最終決定したところである(本紙通巻第551号
および畜産の情報【海外編】7月号p43などを参照)。

  ※:MAPAコミュニケでは「倍以上」と記述しているが、あくまで試算したものである。


【ブエノスアイレス駐在員 犬塚明伸 平成17年9月28日発】


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