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米国下院、7年ぶりに日本との経済・貿易問題に関する公聴会を開催 米国下院歳入委員会は9月28日、対日経済・貿易問題について自由・公正な関係を求めることを目的 とし、日本との経済・貿易問題に関する公聴会を98年以来7年ぶりに開催した。特に農産物貿易につい ては、米国産牛肉の輸出再開、植物検疫、高関税などの課題について全国肉牛生産者・牛肉協会(NC BA)などが証言を行った。各証言のうち牛肉問題および世界貿易機関(WTO)交渉に関する概要は 以下のとおり。 NCBA 2003年末のカナダからの輸入牛でのBSE発生後、6割の海外市場を失った。その後2年が経過した が、いまだ日本市場は開放されていない。米国中米自由貿易協定(CAFTA-DR)を支持してきたが、 本件が解決されないのであれば、新たな貿易協定の締結を支持できない。特に、香港で開催されるWT O閣僚会合までに本件が解決されないのであれば大変なことである。日本が好ましい手続きを経ること が出来るよう我慢をしてきたが、我慢の限界である。われわれは不公正に扱われており、報復をすべき である。日本の食品安全委員会は審議に時間を浪費している。前向きな結果を早期に引き出す必要があ る。われわれは何らかの行動が必要であると確信している。 米国農務省海外農業サービス(USDA/FAS) 農業は米国の貿易収支上重要な産業である。日本をはじめとする海外市場には不公正な貿易制限があ り、30億ドル(約3,390億円:1ドル=113円)の追加的な販売が締め出されている。将来の米国農業の 財政的な健全は世界市場での成否にかかっている。日本市場については動植物検疫問題により潜在的な 貿易能力を十分に発揮できない。牛肉の輸出再開問題は政府内において大統領もかかわるなど高い関心 が払われている。われわれは国際基準設定機関である国際獣疫事務局(OIE)の役割や科学に基づい た決定の重要性を日本に強調してきた。食品安全委員会が評価を早期に終了し、日本政府が輸入再開の ための手続きを迅速に行うことを切望する。 日本はWTO交渉において、特に農産物の市場アクセスについて保護主義的な働きかけを継続してお り、交渉の前進に寄与していない。また、「センシティブ品目」を最大限活用しようとしている。関税 削減方式や上限関税にも異を唱えている。 米国通商代表部(USTR) ポートマン米国通商代表は牛肉問題に多くの時間を割いてきた。先日も日本の経済産業大臣に本件に ついて強い意見を述べたところである。食品安全委員会は答申に向けて最終的な段階にあるがいまだ終 了しないことに失望している。理由はともあれ日本には本件について結論に至るに十分な時間があった はずである。科学に基づき正しい決定が行われ、米国産牛肉に日本市場が完全に開放されるまで、あら ゆるレベルを通じて日本に圧力をかけていく。 モラン下院議員(カンザス州選出) 米国は日本も加盟国であるOIEの基準に基づきBSEの発生後、SRMの除去など多くの対策を講 じた。カンザス州の牧場主にとって本件以上に重要な貿易問題は存在しない。日本の立場を支持する科 学的根拠は存在しない。このため、USTRは日本への経済制裁を検討すべしとの決議を自分は支持し ている。 委員からは過激な意見も 委員からは、@USDAが日本産牛肉を解禁しようとしているのはばかげている、Aカナダの生体牛 が国境を渡る前に米国産品が締め出されている海外市場を開放するようUSTRはもっと積極的に活動 すべし、B人為的な貿易障壁により米国産品が日本市場に存在し得ないのに、日本の食品安全委員会の 座長は結論を急いでいないと言っている、Cあまりに長い時間がかかり過ぎている、など、不満が続出 した。しかし、委員会への委員の出席は低調であり、かつ、政府からの証言者も事務方の幹部クラスに とどまるなど形式的な公聴会との印象を受けた。【ワシントン駐在員 犬飼 史郎 平成17年9月28日発】
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