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好調な牛肉輸出が続く南米各国


 今年に入り、南米各国の牛肉輸出が活況を呈している。EU域内の牛肉不足、米国、カナダでのBSE
問題などから南米の牛肉に注目が集まり、各国とも輸出量、輸出額の記録を更新している。



アルゼンチン、ロシア向け生鮮肉輸出が急増

 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)が9月1日公表した2005年1〜7月の牛肉輸出量(生鮮、
加工肉および内臓を含む、製品重量ベース)は、前年同期244,970トンを35.3%上回る331,484トン、輸出額
は同5億5,542万ドル(622億円:1ドル=112円)を35.5%上回る7億5,250万ドル(843億円)となった。

 内訳を見ると、生鮮肉(EU向け高級牛肉枠(ヒルトン枠)を除く)の輸出量は、前年同期比66.2%増の
228,021トン、輸出額は同83.2%増の5億1,649万ドル(578億円)となった。中でもロシア向け輸出量は全体
の53.6%を占める12万2,255トンで前年同期の約3.3倍、輸出額は同3.8倍の2億1,548万ドル(241億円)とな
った。また、EU向けの輸出も伸びており、ドイツは前年同期比65.1%増の1万1,251トン、イタリアが同
62.7%増の4,052トン、英国が同36.4%増の3,875トンとなった。なお、昨年7月に解禁されたチリについ
ては、ロシアに次いで、全輸出量の9.2%を占める2万1,006トンであった。



ウルグアイ、米国向けを中心に16.7%増

 ウルグアイ国立食肉院(INAC)によると、1〜7月の牛肉輸出量(冷蔵・冷凍肉および加工肉、枝肉重
量ベース)は前年同期比16.7%増の27万77トン、輸出額は同20.9%増の4億1,986万ドル(470億円)となった。
主要な輸出先は北米自由貿易協定(NAFTA)地域が21万5,623トンと輸出量全体の79.8%を占めている。
そのうち、米国は20万6,961トンと前年同期に比べ40.8%の大幅増となった一方で、カナダは同59.9%減の
8,535トンとなった。



ブラジル、前年同期比31.7%増

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2005年1〜7月の牛肉輸出量(冷蔵・冷凍肉、および
加工肉、製品重量ベース)は前年同期比31.7%増の75万7,488トン、輸出額は同32.1%増の17億629万ドル
(1,911億円)となった。このうち、生鮮肉(冷蔵・冷凍)の輸出量は同36.5%増の65万7,371トン、輸出額は
同37.1%増の14億4,062万ドル(1,613億円)であった。これを国別に見ると、ロシアが同127.6%増の16万
366トン、エジプトが同29.9%増の9万6,014トン、アルジェリアが同309.6%増の3万4,169トンとなった。
生鮮冷蔵肉の輸出量が最大のチリは4万1,274トンと前年同期を20.0%下回った。これは、チリがアルゼン
チンからの輸入を解禁したことが要因と見られる。



ブラジル、アルゼンチンパッカーを買収

 こうした中、ブラジル最大手の食肉パッカーFriboiグループは9月5日、アルゼンチン最大手の食肉パ
ッカーであるSwift Armour S.A社(従業員数約2,570人)を買収した。両社は買収の内容については沈
黙を守っているが、Friboiグループが株式の半数以上を取得したことは確実で、かつ、ブラジル現地報道
によると、買収額は2億ドルに達し、このうち8千万ドルが社会経済開発銀行(BNDES)の融資による
ものと言われている。

 Swift社は冷凍加工肉、缶詰総輸出量のそれぞれ約6割と7割の国内シェアを占め、輸出先は70カ国以上
に上る。一方のFriboiグループのと畜部門は1日当たり1万5千頭の処理能力を有し、年間180億ドルの売
上げのうち、80億ドルが70カ国以上への輸出によるとされている。今回の買収により、メルコスル内に巨
大パッカーグループが誕生することになるが、ブラジル側では、今後さらにアルゼンチンの食肉パッカー
の買収を進めていくといわれ、メルコスル内での食肉企業再編に向けたこれからの動向が注目される。



【ブエノスアイレス駐在員 横打 友恵 平成17年9月14日発】


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