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豪州財界、日本とのFTA実現可能性の共同研究に関する意見書提出


豪州ビジネス評議会、FTA推進意見提出

 日本と豪州間の自由貿易協定(FTA)については、2005年4月日本で行われた日豪首脳会談で、F
TAの実現可能性に関する共同研究の開始に合意した。合意の中で、農業分野に関しては、極めて困難
な問題であるとの認識に立ち、そのメリット、デメリットについて研究することとなった。

 これを受けて豪州政府は、8月26日を期限としてこの共同研究についての意見を各方面から募集した
ところ、豪州の財界団体である豪州ビジネス評議会(BCA)から意見書が提出された。この意見書の中
でBCAは、豪州は日本と農業分野を含めた包括的なFTAを締結すべきだが、交渉期間は日本の規制
緩和の進行を踏まえ短期間で終わらせるべきでないなどと述べている。意見書の概要は、次のとおりで
ある。



日本への一次産品輸出は好調も、全体のシェアは低下

 意見書ではまず、日本と豪州の貿易の現状について分析している。

1 日本は豪州の最大の輸出相手国

  特に一次産品の輸出が好調で、金額ベースでは日本向け輸出の89%を占める。品目別輸出割合を見
 ると、牛肉の49%、石炭の43%、鉄鉱石の37%、アルミニウムの36%を日本が輸入している。将来の
 不安材料として、日本経済の停滞と東アジア諸国などへの輸出増により、日本向け輸出シェアが金額
 ベースで85年の28%から2004年17%に低下していることを挙げている。

2 日本への工業製品の輸出は低調

  日本向け輸出の中での工業製品のシェアは低く、しかも90年の15%から2004年は10%と、低下して
 いる。日本側の工業製品に対する貿易障壁は低いため、なぜシェアが落ちたか検討が必要。

3 サービス・投資分野は停滞

  日本へのサービス分野の輸出額は過去10年間伸びておらず、また、日本からの豪州への投資も停滞
 している。豪州からの他国へのサービス輸出は最近10年間で30%増加している。このような状況を改
 善するための要因分析などが必要。



FTAにはすべての分野含めるべき

  次に同意見書ではいくつかの提案を行っている。

1 貿易障壁を撤廃し、2国間のより自然な貿易や投資の流れを作ること

2 すべての分野での合意を保証すること

  豪州は、日本とすべての分野でのFTA締結を目指すべきだ。日本は全分野についてのFTA交渉
 は行わない傾向を示してきた。日本がシンガポールやメキシコ、タイとすでに合意したFTAの内容
 は、「経済緊密化協定」であってFTAではない。

3 サービス分野の自由化
  
  日本のサービス分野は、他のほとんどのOECD加盟国より規制が厳しい。豪州政府は、日本にサ
 ービス分野(特に金融部門)の自由化を強く求めるべきだ。

4 長期間にわたる交渉で利益を得ること

  豪州は、日本とのFTA交渉についてより長い交渉期間を設けるべきだ。日本は長い、ゆっくりと
 した改革の過程にある。改革の進行につれ、豪州のビジネス機会(特にサービス部門)も増加する。

5 前進のための具体的方策

  日本に、商品貿易に関して求めるものは

  ・履物、衣類、織物の関税の撤廃
  ・関税以外の貿易障壁の撤廃
  ・農産物輸入の貿易障壁の削減、牛肉の関税の緊急措置の撤廃、輸入枠の撤廃など

  サービス分野に関しては、

  ・金融サービス市場の自由化
  ・商用目的の一時滞在者や他の技術的専門知識を有する者の旅行期間の自由化
  ・ビジネスの専門家にかかる制限の撤廃
 
  ただし、日本に譲歩を求めるには、豪州側の譲歩も必要。




【シドニー駐在員 井上 敦司 平成17年9月14日発】


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