ALIC/WEEKLY
EUにおける高病原性鳥インフルエンザ(AI)の感染が確認された2月中旬以降、EU全体で見ると 家きん肉価格は下落しているが、加盟国別に見るとその状況は大きく異なっている。例えば、感染が確認 されていないベルギーで大きく価格が低下する一方、感染が確認されたドイツでは昨年を上回る価格で推 移している。 EUにおける鳥インフルエンザをめぐる状況 EUでは4月7日現在、本年2月13日の域内でのAI感染確認以降、13カ国において野鳥での感染が確 認され、このうち、家きんでの感染はフランス、スウェーデンおよびドイツで確認されている。 このようにEUにおいてAIの感染が拡大する中、本来、適切に調理すれば問題のない家きん肉や卵の 消費が低迷し、このことが生産者の経営を圧迫しているとして、加盟国からEUに対し補助を求める声が 大きくなった。このため、欧州委員会は3月20日、各国が実施する緊急の市場政策への補助について検討 する意向を示すとともに、同29日には具体的な財政支援策案を公表、また、4月6日にはこの財政支援策 案を欧州議会が一部修正の上採択するという対応がとられている。 2月以降の家きん肉参考価格の推移 家きん肉の参考価格は、各加盟国が毎週算出する平均的な公的指標価格で、食鳥処理場における売買価 格や代表的な市場における卸売価格が基となっている。また、欧州委員会では各国から報告される参考価 格を加重平均して25カ国の平均参考価格を算出している。 このEU25カ国の平均参考価格の推移を見ると、2月中旬まではやや上昇傾向で推移したものの、その 後、EU域内でのAI感染が確認されたことから低下傾向で推移し、4月2日の時点では前年同期比で84.8 %の水準まで低下している。 一方、これまでAIの感染が確認されていないオランダ、ベルギー、スペイン、イギリスの国別の家き ん肉参考価格を見ると、その価格推移の傾向はそれぞれ異なる。オランダの場合は、ほぼ前年と同水準で 価格が推移しており、AIによる価格の影響はみられないが、その隣国のベルギーでは2月中旬以降、価 格は週を追って下がり続け、4月2日にはやや回復したものの同65.5%の水準にまで大幅に低下している。 また、スペインでは3月上旬まで影響がみられなかったものの、3月中旬以降は大きく低下し、4月2日 の時点では同85.8%の水準にまで落ち込んでいる。イギリスの場合は、価格が大きく変化することがない ものの微減傾向で推移し、4月2日の時点では同92.5%の水準となっている。 また、これまでにAIの感染が確認されたドイツ、フランス、イタリアの中でも価格の推移傾向は全く 異なる。ドイツは2月以降、前年同期比が約107%で安定的に推移しており、AIの影響は全くみられない。 一方、フランスは価格の変動が大きいものの、3月以降、前年同期比で見ればほぼ8割前後で推移してい る。イタリアの場合は、今回のAI発生による消費の落ち込みが域内では最も大きいと言われているが、 価格を見ると、2月中旬以降低下傾向で推移を続け、4月2日の時点では前年同期比で60.9%の低水準と なっている。 配合飼料生産への影響 欧州配合飼料生産者連盟(FEFAC)は3月27日、EU25の2005年の配合飼料の生産実績を公表した。 この中で、養鶏用配合飼料の生産については2005年末よりAIの影響が出始めており、現時点での見込み では、2006年の養鶏用配合飼料の生産量は、2005年の4,616万トンから250〜500万トン減少するとしている。 地域評議会がEUレベルでの情報キャンペーンの実施を提言 こうした中、市民に最も密着した地域政府機関の声をEUの政策に反映させるために設けられた諮問機 関である地域評議会(The Committee of the Regions)は4月3日、AIに対する消費者の不安払しょく と家きん肉の安全性を伝える情報キャンペーンをEUレベルで実施することを提言している。また、欧州 委員会に対しては、農業分野で発生する危機について、その経済的影響を評価するシステムの構築と、そ れに対応した政策の実施を強く主張している。 【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年4月7日発】
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