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米国農務省、新農業法フォーラムにおける意見を集約(1)


 
4,000件以上の意見を41の課題に集約

 米国農務省(USDA)は3月29日、同省が2005年に開催した2007年農業法に関するフォーラムで、農
業関係者から出された意見および同年末までにウェブサイトなどを通じて提出されたパブリックコメント
の要約作業を完了し、4,000件以上に及ぶ意見を41の課題ごとに集約した意見概要を公表した。

 当該公表された資料は、各課題ごとに、背景、一般的な意見の概要、具体的な提案の三つの項目から構
成されており、今後、USDAによる新たな農業政策の検討の基礎として、また、2007年農業法の立案に
向けた分析資料として活用されることとなる。

 今回公表された意見概要のうち、畜産に関連する主な課題に対する意見は以下のとおり。

1.食品安全

  現行の農業法は、米国民に対し安全な食物供給を保証しているとの意見が数多く出された一方で、農
 家への直接支払いなどによって活発化した農業の規模拡大や寡占化が食品の安全問題を増大させたとす
 る指摘が述べられた。

  地方のと畜場に対する資金援助の増加を求める者がいた一方で、生産者による消費者への直接販売を
 認めるよう求める少数意見もあった。

  また、すべての規制は、経費の増大を招くことを指摘する少数意見もあり、農業政策は科学的で、経
 済的であり、かつ効果的な規制を入れるべきであるとされた。

2.家畜衛生
 
  家畜衛生上の脅威や病気の問題に対し、一般論として、家畜伝染病の防止や撲滅を含め、より注意が
 払われ、連邦政府の資金的な支援が継続されるべきとされた。
 
  多くの参加者が、鳥インフルエンザに対して懸念を示すとともに、全国鳥改善プログラム、研究、高
 病原性および低病原性鳥インフルエンザに対する補償を支持した。

  BSE問題に対する米農務長官による対応に対し感謝を示す者がいた。一方で、特にアジアの市場に
 おける米国産牛肉の輸入再開について落胆を示す者もいた。

  牛肉および鶏肉は、BSEや鳥インフルエンザの懸念に直面しているため、農業法により、HACC
 Pまたは同等の食品安全を強化する手段を講じている生産者への奨励金を要望する者もいた。

3.全国個体識別制度(NAIS)

  統一的な個体識別制度の実施自体は支持するが、経費の負担を望まないとの意見が多数出された。ま
 た、このような意見のほとんどが、政府がデータベースを管理し、義務的かつ、公的資金が提供される
 制度の運営を望むとしている。

  本制度の実施者として、農業団体が適当であるとの意見もあった。

  さらに、費用および守秘義務の観点から民間によるデータベースの管理を支持する意見もあった。

4.原産国表示制度(COOL)

  魚介類を除くCOOLの完全実施は、2008年9月末まで延期されているが、任意の実施を望む意見が
 わずかにあったものの、食肉および食肉製品に対する義務的な実施を支持する多数の意見が述べられた。

5.動物愛護

  家畜の動物愛護に関する懸念が多く示された。農場、輸送、と畜に関する最低基準の設定を求める意
 見や、USDAによる畜産における動物愛護に対する懸念を払しょくするための努力を求める意見など
 があった。


【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年4月6日発】




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