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2006年の10大ニュース 《ブリュッセル駐在員事務所》           和田 剛  ・ 山ア 良人


 1.TSE規則の改正案を理事会が承認(EU)

  EUの理事会は11月23日、EUにおける伝達性海綿状脳症(TSE)対策の根拠規則である「TSEの防疫、
 管理、撲滅に関する規則(EC/999/2001)」の改正案に合意した。この改正には、BSEリスクに応じた各国
 のカテゴリー分けの変更、一定の条件を満たす場合のサーベイランスの緩和、魚粉の飼料への利用の認可、わ
 ずかな量の動物由来たんぱく質の飼料混入の容認、BSE陽性牛と関連する牛のとうた基準の緩和など、2005年
 7月に発表されたTSEロードマップに沿った対策の緩和につながる項目が含まれている。


2.EU加盟国の家きん農家で高病原性鳥インフルエンザを確認
 
  フランス農漁業省は2月24日、同国中東部のアン県の家きん農場でH5N1型のウイルスによる高病原性鳥イ
 ンフルエンザ(HPAI)を確認した。これは、EU域内で、同型のウイルスによる家きんへの感染が確認され
 た初めての事例であった。その後、スウェーデン、ドイツ、デンマーク、ハンガリーで同型のHPAIが確認さ
 れたが、数々の侵入防止策、バイオセキュリティ対策の実施により、7月以降、EU域内の家きん農場でのHP
 AIは確認されていない。


3.ブルガリア、ルーマニア、2007年1月のEU加盟が決定

  EUの外相理事会は10月17日、欧州委員会が9月26日に発表したブルガリアとルーマニアのEU加盟に向けた
 準備状況に関する最終の包括的監視レポートを承認した。これにより、両国は2007年1月1日より、EUに加盟
 する。本報告書では、両国の加盟に向けた準備は整っているものの、農業分野では資金管理、食品安全などの懸
 案事項を挙げている。

  また、EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は、ブルガリアとルーマニアに対し、食品安全や動物衛生
 分野において移行措置などを認める欧州委員会の提案を承認している。


4.熱波・干ばつにより飼料などの生産が減収になると予測(EU)

  欧州委員会は8月11日、本年5月から7月にかけて欧州を襲った熱波・干ばつの影響を考慮した最新の作物の
 収穫予想を公表した。これによれば、飼料を含む多くの作物が前年と比べ減収となることが予測されている。
 2003年の猛暑の際の被害に比べ、その被害範囲は広いものの、被害の度合いは全体的に見れば軽いと予測してい
 た。このような状況の中、欧州委員会は、干ばつの影響で家畜の飼養に深刻な影響が出ている加盟国に対し、直
 接支払いの受給の条件として設定している休耕地を飼料用に利用することを許可した。


5.イギリス産牛肉の本格的輸出が10年ぶりに再開

  欧州委員会は5月2日、イギリス産の生体牛および牛から生産されるすべての製品に対する輸出の制限措置を
 廃止する委員会規則を施行した。これを受けたイギリスの国内規則が5月3日に施行され、同日からイギリス産
 牛肉などのEU域内への輸出が再開された。これまでも、一定の条件を満たした牛肉などの輸出は可能であった
 が、非常に厳しい条件を満たしたものに限定されており、その制限がなくなるという点で、96年3月以来、10年
 ぶりの本格的な輸出再開となった。


6.欧州委、家きん肉に係る新たな関税枠を設定

  欧州委員会は、10月27日にブラジル政府との間で、また、11月28日にタイ政府との間で、EUが輸入する家き
 ん肉の一部に対し新たな関税枠を設定すること、およびその関税枠内における税率や両国への配分数量について
 合意に達したことを公表した。これは、EUが、2002年7月に冷凍鶏肉の関税率の分類を変更したことを両国が
 世界貿易機関(WTO)に提訴し、同紛争解決機関(DSB)のパネルが、EUの措置がWTO協定に整合する
 ものではないとのレポートを取りまとめ発表したことを受けての措置であった。


7.北緯50度以北でブルータングの感染を初めて確認(EU)

  欧州委員会は8月18日、オランダ南部でブルータングに感染した羊が発見された旨の報告が同国よりあったこ
 とを公表した。これまで、EUでは、イタリアやスペインなどの比較的緯度の低い国々でその発生が確認されて
 いたが、北緯50度以北での感染確認は初めてとなる。オランダ政府は、今回の感染確認について、ウイルスを媒
 介する吸血昆虫の生息域が最近の地球温暖化により北に移動してきた結果とみている。同疾病の感染域はその後
 も拡大しており、同地域近郊のベルギー、ドイツ、フランス、ルクセンブルクで確認されている。


8.欧州委、動物福祉に関する5年間の行動計画を公表

  欧州委員会は1月23日、2006年から2010年までの5年間の動物の保護および福祉政策の改良のための具体的な
 行動計画を採択し、公表した。この行動計画は、@動物福祉の最低基準の引き上げ、A動物福祉分野における研
 究および動物試験における「3つのR」の原則(replacement(代用)、reduction(減少)、refinement(改良))
 の促進、B動物福祉に関する表示の規格化の導入、C家畜飼養者や一般国民との動物福祉に関する情報の共有お
 よび提供の促進、DEUの動物福祉分野における国際的な主導的立場の保持の5分野の行動計画から構成されて
 いる。


9.欧州委、2005/06年度の生乳供給量を公表

  欧州委員会は10月3日、2005/06年度(2005年4月〜2006年3月)のEU25カ国の生乳供給量の速報値を公表
 した。これによると、25カ国の生乳供給量の合計は、1億3,392トンで、生乳生産割当枠(クオータ)に対する
 生乳供給量は9カ国で121万9,863トン超過し、これに伴う課徴金は3億7,706万ユーロ(約588億2千万円:1ユ
 ーロ=156円)となった。

  なお、クオータ制度については、2003年の共通農業政策改革により、2014/15年度まで継続することが決定し
 ているが、欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、本制度の将来像、存続の是非
 についてたびたび問題提起を行い、議論を促している。


10.欧州委、ドイツでの豚コレラ再発で対策をさらに強化

  ドイツ当局は3月3日、欧州委員会に、同国中西部のノルトライン・ヴェストファーレン州の3カ所の養豚
 場において豚コレラが発生したことを報告した。欧州委員会は3月28日、同州において豚コレラに対する対策
 を実施してきたにもかかわらず、4例目となる事例が確認されたことにより、ドイツの同病の防疫対策に関す
 る委員会決定を適用した。その後も、新たな発生が確認されたことに伴い、さらに強化する委員会決定を適用
 するなどの対策により、同疾病の発生が見られなくなったことから、7月31日以降、強化対策の延長はされて
 いない。

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