ALIC/WEEKLY


2006年の10大ニュース 《ワシントン駐在員事務所》           郷 達也  ・ 唐澤 哲也


1.米国産牛肉、対日輸出再開

  ジョハンズ米農務長官は7月27日、日本政府が同日米国産牛肉の輸入再開を決定したことを受け、今後も科学
 に基づく国際基準にそった牛肉貿易を進める努力を継続しなければならないとしながらも、当該決定を賞賛する
 声明を発表した。また、米国の各食肉関係団体も、今後に向けたステップと強調しつつ、概して今回の決定を歓
 迎するコメントを発表した。

  一方、韓国は9月7日、30カ月齢未満の骨なし牛肉の輸入再開を認めることを発表したが、その後、輸入検査
 時に骨片の混入が確認されたとして輸入承認を停止しており、これに米国が強く反発するなど混乱が続いている。


2.米国、WTOドーハ交渉の一時凍結に落胆

  シュワブ米国通商代表とジョハンズ農務長官は7月24日、ジュネーブにおいて、ラミーWTO事務局長がドー
 ハラウンド交渉を当面の間凍結することを決定したことに関し、米国は貿易わい曲的国内支持および市場アクセ
 スに関する柔軟性を携えていたにもかかわらず、ほかの5カ国(日本、豪州、ブラジル、インド、EU)がG8
 サミットの際と同じ姿勢を取り続けたとして、G6閣僚会合の結果に非常に落胆していると述べた。

  その後、ドーハラウンド交渉の再開に向けて水面下での調整が進められてきたが、現段階ではその見通しは立
 っていない。


3.米国農務省、2007年農業法に向けた重点課題を公表

  米国農務省(USDA)は9月13日、「将来の米国農業の発展に向けた基盤強化」と題した米国農業政策に関
 する分析資料を公表した。USDAは、次期農業法の作成段階の透明性確保、また、同法に米国民の意見を最大
 限に反映するため、それまで四回にわたり、特定の課題に対し同省のエコノミストが分析した資料を公表してい
 た。今回の資料は、一連の分析資料の五回目かつ最終版となるものであり、これまでの資料同様、2007年に予定
 される同法改正に向けた米国民による議論の際、活用されることとなる。


4.FMMO規則の変更をめぐる米国の酪農・乳業界のスタンス
 
  米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は本年6月、連邦ミルク・マーケティング・オーダー
 (FMMO)制度におけるクラスV(チーズ・ホエイ向け)およびクラスW(バター・粉乳向け)の生乳価格の
 算定方法を修正し、最低取引価格を引き下げるよう規則の変更を提案した。今般、この提案に対する意見提出が
 9月末に締め切られたことを受け、米国の乳業団体および酪農団体は、それぞれの主張と見解を公表したが、乳
 価の算定方式をめぐる両者の立場の違いが明確になっている。


5.米国、バイオ燃料の生産技術に関する調査研究を推進

  ジョハンズ米農務長官およびボドマン同エネルギー省長官は10月11日、ブッシュ米大統領の先端エネルギーイ
 ニシアティブの推進を目的として開催した再生可能燃料推進会議において、海外への石油依存度を縮小するため、
 トウモロコシをはじめ、大豆ミール、セルロースなどからのバイオ燃料の生産などに関する調査・開発計画に対
 し、総額1,750万ドル(20億4,750万円=1ドル117円)の資金を提供することを公表した。近年、米国では、トウ
 モロコシを主原料とする燃料用エタノールの生産が急速に拡大しており、需要拡大によりトウモロコシの価格
 (1ブッシェル当たり)は昨年11月の1.79ドル(209円=1ドル117円)から本年11月には3.12ドル(365円)へ
 と急騰している。


6.米国、鳥インフルエンザ早期発見のため野鳥の監視を強化

  米国農務省(USDA)は8月28日、同月14日にH5N1型の鳥インフルエンザの確認を公表したミシガン州
 の野生のコブハクチョウの病原性について、確定診断の結果、低病原性であったことを公表した。また、同省お
 よび内務省(DOI)は9月初め、メリーランド州の野鳥のふんおよびペンシルベニア州の野生のマガモから採
 取したサンプルで、それぞれ低病原性の鳥インフルエンザを確認したことを公表した。その後も、検査プログラ
 ムの強化により、イリノイ州などで低病原性の鳥インフルエンザが確認されたものの、これまでのところ高病原
 性鳥インフルエンザの野外感染例は確認されておらず、両省では懸念の必要はないことを強調している。


7.CFIA,BSE7例目の疫学調査を終了

  カナダ食品安全庁(CFIA)は8月24日、本年7月13日に確認された同国で7例目のBSE感染牛であるア
 ルバータ州の乳牛に関する疫学的調査を終了したことを公表した。この感染牛は1997年にカナダが飼料規制を開
 始した後に生まれていたことから、調査結果は各方面の注目を集めていたが、CFIAはある商業的飼料工場で
 禁止原料から製造された牛用飼料が誤ってBSE感染牛の飼養農場に出荷されていたことが判明したとして、こ
 れが感染源であることを示唆している。


8.米国、輸出需要の高まりにより豚肉生産は拡大

  米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月29日に公表した豚飼養動向調査結果によると、2006
 年9月1日現在の豚総飼養頭数は、前年同期比1.4%増の6,270万頭と、ここ10年間で2番目に多い結果となった。
 USDAでは、米国の養豚経営は、2004年初頭以降継続的に収益を上げているとしており、今後も輸出需要の高
 まりなどを背景に、豚肉生産量はさらに拡大するものと見込んでいる。


9.カナダの大手食品加工会社が豚肉事業の再編を公表

  カナダの大手食品加工会社で豚肉パッカーでもあるメイプルリーフ・フーズ社は10月12日、同社の食肉処理部
 門の統合・再編により事業規模を縮小するとともに、今後は付加価値の高い食肉製品や加工品分野に経営資源を
 集中することを公表した。これを受け、再編により食肉処理頭数の拡大が見込まれるマニトバ州の豚肉生産者協
 議会は今回の決定を歓迎するコメントを出す一方、今回の決定で大半のと畜場が閉鎖されると見込まれるオンタ
 リオ州などの生産者団体は肉豚価格の低下への懸念を表明している。


10.日墨経済連携協定(EPA)による貿易の緊密化

  昨年4月に発効したEPAにより、日墨間の農産物貿易は増加傾向で推移しており、畜産物においても牛肉お
 よび豚肉の対日本への輸出が進捗している状況にある。メキシコ農牧省(SAGARPA)では今年の日本向け
 牛肉の輸出見込みを、昨年比50%増である1万2千トンになると予測している。また、本協定の一部品目におけ
 る枠内税率協議の合意により、2007年度からは牛肉および鶏肉においても一定数量の関税削減枠(20〜40%の関
 税削減)が設定されることとなっている。




元のページに戻る