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2005年の農業生産額全体の成長率は2.2% フィリピン農務省農業統計局(BAS)は1月13日付で2005年全体の農業統計を公表した。同国農業部門 全体の生産額では前年比2.2%増と低い成長率となった。同国農業部門全体では第3四半期の台風による被 害などの影響で、農業生産額の46.7%を占める作物部門が不調であったことが特徴として挙げられる。 作物部門で最大の生産額を占める米では前年比0.7%増、生産量にして1,460万トンと、昨年の成長率7.4 %と比べると小幅な成長となっている。 飼料自給率向上のため重点対策を行っているトウモロコシについては前年に比べ生産額は3%減、総生産 量525万トンと、昨年の成長率17%からは大きく落ち込んでいる。政府はこの理由として上半期の全国的な 干ばつと、局地的に発生した洪水による被害などの気候的影響と肥料費の高騰などコスト増大が生産意欲の 減退を招いたことなどを挙げている。 農業生産額の24%を占めるまで増大した水産部門は昨年に比べて成長率が下がったものの好調で、前年比 6.5%の増加となっている。 酪農・養豚が好調な畜産部門 家きん部門を併せた畜産部門の農業生産額全体に占める割合は29%で、2005年全体では牛や水牛など大反 すう家畜でマイナス成長になる一方、養豚と酪農は好調を維持している。 家きんを除く畜産部門全体の生産額は前年比2%増と堅調な伸びで、内訳として同国で消費の多い豚肉が 同3.1%増、乳製品生産が前年に比べ同6.3%とかなりの程度増加を示している。しかし一方で、牛肉生産は 同2.8%減、水牛では同3.3%減となるなど低迷した。 一方家きん部門の生産額は全体で1.4%の伸びにとどまった。鶏卵と鶏肉生産は堅調でそれぞれ生産額は 前年比8%、0.5%の成長率を示しているのに対し、第4四半期にアヒル飼養羽数が大幅に減少したことを 受けてアヒル肉、卵の生産額がそれぞれ8.3%、5.9%減となっているのが特徴的である。 農務省、2006年行動計画を公表 また、関連して農務省は年明け後、2005年の評価と2006年行動計画の概略を公表した。畜産関連の主な対 策は次のとおり。 ○組織改革:昨年度に起こった汚職問題などの再発防止のため、今年上半期を目標に組織改革チームにより 合理化プランを提示することとし、この計画により国および地方機関の組織再編を図り行政の合理化を進 める。また、内部監査の再開により一層の透明性の確保を図る。 ○WTO協議:途上国グループ(G33,G20)の一員として、またケアンズグループとして、香港会議で合 意された内容の実現に向けて意見を同じくする諸国との協調により今後の協議に当たる。 ○アセアン中国FTA:アセアンと中国の、FTA協議の枠組の中で先行自由化(アーリーハーベスト)対 象農産品に関する協議の結果、当初予定から1年遅れて2006年1月1日から協定の発効が決定された。農 務省はこれにより同国産ココナツオイルや熱帯果物、水産物などの輸出振興が図られると期待している。 ○鳥インフルエンザ対策:農務省家畜産業局(BAI)を中心として全国的啓もう活動を行い、高リスク地域 では重点的な検査・監視・調査を行う。また効果的な防疫体制の整備を図り、国際機関やアセアン諸国と の連携を密にし、緊急時の対応方針を固めることとする。 ○トウモロコシ増産計画:生産者の規模拡大を促進するため小規模かんがい排水計画、遺伝改良種子や貯蔵 施設調達に際しての債務保証などを行う。 ○畜産振興計画:鳥インフルエンザや口蹄疫などの家畜疾病対策とともに、種畜の遺伝的改良、酪農分野で はコールドチェーンの整備などの流通改善および獣医用薬品や飼料、食肉加工場などに対する承認の規制 強化などを重点的に行う。 【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成18年1月20日発】
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