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欧州委、2004年度の直接支払いの内訳を公表


2004年度は、生産に応じた直接支払いの最終年度

 欧州委員会は7月4日、2004年度(2003年10月16日〜2004年10月15日)の直接支払いの受給額別に分類
した報告書を発表した。
 
  EUは、2003年6月に合意した共通農業政策(CAP)改革において、これまで生産に応じて支払われ
た直接支払いから、生産とは切り離した単一の直接支払い(デカップリング)を創設し、2005年1月1日
から適用している。本報告書は、生産に応じて支払われた直接支払いの最終年度の報告書であり、次年度
からのデカップリングされた実績とを比べる上で参考になるものと思われる。

  なお、加盟国は作物別(耕種作物、牛肉・子牛肉、羊・ヤギ肉)にこれまでの生産に応じた直接支払い
の一部を継続できるオプションを選択でき、一部の加盟国では、子付雌牛奨励金、子牛以外のと畜奨励金
などを継続することとしている。


直接支払い額は大規模農家へ傾斜

 2004年度の直接支払いの総額は、EU15カ国で、282億4,800万ユーロ(4兆1,524億6千万円:1ユーロ
=147円)であった。これは、CAPによる補助金(直接支払い、輸出補助金、価格支持政策、農村開発政
策)の合計額の約7割近くを占めている。また、直接支払い受給農家戸数は、EU15カ国で、488万6千戸
となっている。

  直接支払いの総額を受給額別に見ると、5千ユーロ(73万5千円)以下の支払いは、全体の15.0%に相
当する42億5千万ユーロ(6,247億5千万円)、5,001ユーロ(73万5千円)以上の支払いは、同85.0%に
相当する240億200万ユーロ(3兆5,282億9千万円)であった。

  また、受給農家戸数を受給額別に見ると、5千ユーロ以下の受給農家戸数は、全体の76.6%に相当する
374万戸、5,001ユーロ以上の受給農家数は、同23.4%の115万戸であった。

  このことから、直接支払いは、規模が大きい農家に受給が集中していることがうかがえる。なお、その
中には、30万ユーロ(4,410万円)以上を受給する農家もあり、額では全体の4.6%に相当する12億9千万
ユーロ(1,896億3千万円)、農家戸数では同0.1%に相当する約2千戸が該当していた。
 
  なお、農家1戸当たりの平均直接支払い受給額は、5,781ユーロ(85万円)であった。
加盟国別では農地面積、飼養頭数を反映し、5カ国で8割を受給

  2004年度の直接支払い額を加盟国別に見ると、フランスが69億4,700万ユーロ(1兆212億1千万円、全
体の24.6%)、ドイツが44億6,400万ユーロ(6,562億7千万円、同15.8%)、スペインが41億900万ユー
ロ(6,159億3千万円、同14.5%)、イタリアが32億8千万ユーロ(4,821億6千万円、同11.6%)、イギ
リスが32億7千万ユーロ(4,806億9千万円、同11.6%)と、この5カ国で約8割を占めた。直接支払いに
は、農地面積や家畜の飼養頭数が主に反映されるため、これらの規模が大きい加盟国での支払いが多くな
っている。しかし、酪農部門では、直接支払いの制度がないため、酪農が盛んな国は、これが反映されて
いないことになる。


2005年からは、モジュレーションを実施
 
  2003年6月のCAP改革では、農村開発政策に追加的な支払いを行う財源を確保するために、年間の直
接支払い全体額の段階的な引き下げ(モジュレーション)が義務付けられている。このモジュレーション
は、年間の直接支払い受給額が5,001ユーロを超える農家の超過した部分について、2005年に3%、2006
年に4%、2007年以降は5%以下の比率で削減し、これらを農村開発政策に向けることになっている。
 
  また、新聞などの報道によると、フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、直接支払いの
1戸当たり受給額の上限を30万ユーロ(4,410万円)に設定することを示唆したことが伝えられている。



【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成18年7月12日発】


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