ALIC/WEEKLY
食料の大幅な輸入超過の原因の一つに牛肉輸入 6月下旬にマレーシア農業・農業産業相は、同国における2005年の食料の輸出入において、輸入超過額が 74億リンギ(2,294億円:1リンギ=31円)になり、今後においても増加する傾向で、2010年には110億リン ギ(3,410億円)に達する見込みであり、同国の貿易収支と産業の振興の面からもこの額を縮小することが 重要で、国内での食料生産を振興しなければならないと訴えた。食料輸入の中で特に牛肉に関しては、自給 率が2割にすぎず、輸入額も年間20億リンギ(620億円)と多額になっており、国内生産振興の重要性が以 前から指摘されている。 ビーフバレー計画を国家計画で提示 このような事情もあり、マレーシア政府が3月末に公表した第9次マレーシアプランでは、大規模な肉牛 飼養計画をビーフバレー計画として打ち出し、肉牛生産の約8割が小規模農家によって生産されている状況 を改善することにより、牛肉自給率を2010年には3割を超える水準にしたいとしている。 ビーフバレー計画は、当初ヌグリスンビラン州の知事が昨年5月に提唱し、同8月から開始されたもので あったが、中央政府の構想が土地を分割して民間に貸し出すだけのものであった一方、州の計画は豪州やニ ュージーランドのような大規模な牛や羊などの飼養施設において国際的にも進んだ技術を導入するというも ので、両者の構想に隔たりが大きく、調整のために一時計画は中断していた。 調整の結果、州側の構想が大きく取り入れられ、ヌグリスンビラン州のグマス地域に1万ヘクタールの土 地を使用して牛肉および羊肉、またそれらに付加価値を付けた製品を大規模に生産することにより、国内へ の供給はもとより将来的には輸出をも視野に入れた生産を行うとしている。また、2千ヘクタールを樹木を 伴う草地にし、1,400ヘクタールは副収入目的のヤシ林にするほか、200ヘクタールには花を植えるとしてい る。 口蹄疫の清浄化が生産振興の課題 以上の肉牛生産の大規模化を推進する計画のほか、農業・農業産業相は、獣医局(DVS)に対して、2009 年までに口蹄疫(FMD)の清浄化を行うことも併せて指示した。同相は、6月中旬に、半島マレーシアの 中央東側に位置するパハン州のDVS施設の開所式に寄せたメッセージの中で、多くの州でFMDの発生が 継続し、肉牛産業の発展にとって大きな障害になっていると指摘した上で、FMDを理由に牛肉などの輸入 を禁止する国が多いことや、イスラム教の教義に従ったハラル食品の輸出振興のためにもFMDの清浄化が 重要であると強調した。 また、FMDが家畜の移動によって伝播されるのを防止するため、同州のクアンタンなどでの家畜の移動 を監視する施設が設置された。なお、パハン州は州内に牛を放牧するアブラヤシのプランテーションが多数 存在し、半島マレーシアにおける肉牛の約3割を占める州である。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成18年7月13日発】
元のページに戻る