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オーガニック食品、今後の輸出拡大を見込む(豪州)


日本向け輸出量が全体の3分の1

 農業研究開発公社(RIRDC)は、豪州におけるオーガニック食品の今後の輸出可能性に関する報告書を
公表した。これによると、世界のオーガニック食品市場は、380億豪ドル(3兆3,440億円:1豪ドル=88円)
に上り、全体に占める比率は小さいものの、EU、米国および日本といった先進国を中心に急速な伸びをみせ
ている。豪州では、こうした状況を背景として、幅広くオーガニック食品を輸出している。輸出量は、2001年
に37,470トンを記録した後、2003年には干ばつや為替変動などの影響で4,089トンと大幅に減少したが、長期
的には増加傾向を維持している。2003年の国別実績は、日本向けが最大で全体の3分の1(33.6%)を占めて
おり、続いてイギリス、フランス、ニュージーランド、米国となっている。また、オーガニック農畜産物の農
家産出額は1.41億豪ドル(124億円)で、品目別では牛肉が4割程度と最も多く、これ以外では、野菜、果実、
ナッツ、穀物が主なものである。


輸出拡大の可能性は大きいものの、供給面で多くの課題克服が必要

 豪州が、オーガニック食品の輸出拡大を図る上でポイントとなる次の要件を挙げた上で、今後の拡大の可能
性を示唆している。@従来からある農畜産物の価格優位性があるか、A供給ルートが確立されているか、B輸
出市場への有利な立地条件か、C北半球の市場に対する生産物の季節的な優位性があるか

 しかしながら、今後、供給面を中心に次のような多くの課題を克服する必要があることも指摘している。
@南アフリカ、南米、中国、タイそのほかの東南アジアといった新興輸出国との価格劣性、A野菜や果実とい
った生鮮品に関する市場への距離の劣性、B安定的な供給体制の欠如、C生産基盤の脆弱性、D低生産性、
E生産品の不均質性、F認証組織の統一性の欠如など


日本向け輸出は、牛肉・子羊肉などを中心に引き続き増加

  また、輸出相手国の需要動向について、人口、消費者の購買力、健康・食の安全へ関心度、環境への関心度、
流通ルートの発達度、小売段階の認知度、生産体制などを基準に輸出可能性を評価している。

 これらの結果、今後、豪州から輸出増加が見込まれるのは、日本、EU、米国および東南アジアが有望であ
ると結論付けている。

 日本についてみると、特に牛肉・子羊肉などの食肉およびニンジンやかんきつ類をベースとした飲料・ジュ
ース、大豆やトウモロコシをベースとした加工食品などを中心に輸出が拡大するとみている。一方、果実や野
菜といった生鮮品については、豪州の生産量のほぼ4分の3が日本に輸出されているが、今後の輸出量は伸び
ないものとみている。また、長期的には、ワインの輸出が増加するとみている。


今後の輸出は牛肉・子羊肉で引き続き増加、乳製品は限定的

  豪州の今後の輸出可能性を品目別にみると、穀物・穀物加工品については、世界的な価格競争力があること
からかなり有力である。また、牛肉・子羊肉については、BSEや口蹄疫清浄国といった利点があることから
拡大が見込まれている。特に羊肉については、価格競争力があることから米国、イギリスといった遠い国であ
っても輸出が拡大する。乳製品については、牛乳・加工乳、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズなどのチル
ド乳製品は、消費期限、輸送距離の制約により東南アジアなど近隣地域に限定されるとともに、粉乳などチル
ド乳製品以外は、国内供給が潤沢でかつ遠隔地(米国、イギリスなど)に対して輸出は限定的である。果実・
野菜については、季節優位性からある程度の需要があるものの、南アフリカ、南米、中国などとの価格劣性か
ら減少する。また、乳製品を主原料とした乳幼児向け製品については、中国、日本、韓国向けを中心に増加す
る。


【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年7月20日発】



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