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穀物生産農家の経営見通しを公表(豪州)


収益の改善は、飼料穀物需要の増加も一因

 豪州農業資源経済局(ABARE)は先ごろ、2005/06年度における穀物生産農家の経営見通しを公表した。こ
れによると、2005/06年度の1農場当たりの事業損益は、平均して13,619豪ドル(118万5千円:1豪ドル=87円)
の黒字と予測している。

 豪州の穀物は、天候要因が直接、その生産に影響することから、干ばつなど天候の変化により、その収量は、年
ごとに変化してきた。しかし、ここ10年間でみれば、家畜用の飼料穀物需要の増加などを背景に、穀物生産量はお
おむね上昇傾向で推移している。

 農家経営を形態別で比較すると、穀物生産農家については、年々、穀物栽培面積が拡大しており、肉牛や羊専業
農家と比べて、経営は比較的安定している。2003/04年度には、記録的な穀物収量により1農家当たりの事業損益
は、59,446豪ドル(517万2千円)の黒字を計上している。


2004/05年度、穀物・家畜兼業農家で大幅な赤字

  2004/05年度の事業損益見込みについてABAREでは、穀物生産農家平均で1農場当たり5,497豪ドル(47万8
千円)の赤字としている。これは、穀物専業農家では黒字としているのに対し、農家戸数で上回る穀物・家畜兼業
農家の赤字幅が大きいことが影響している。穀物と羊などの家畜生産を行う兼業農家では、原油価格の高騰に伴い
燃料費や輸送費など生産コストの負担増が大きく、1農家当たり平均14,083豪ドル(122万5千円)の赤字を見込
んでいる。

 一方、2005/06年度については、@冬穀物の収量が期待以上に良かったこと、A乾燥気候に対処して大麦などの
栽培面積を増やしたこと、B上昇基調にある羊価格が兼業農家の経営に寄与すること−などから全体の経営動向は
回復に転じるとみている。






○ 豪中FTA交渉、農畜産物も対象品目に

 豪州と中国の間で進められているFTA交渉に関し、中国政府担当者はこのほど、豪州の新聞取材に対し、農畜
産物もFTA交渉の対象品目とすることを明らかにした。FTA交渉の中国側窓口である張(Zhang)交渉官は、豪
州との交渉テーブルに農畜産業、サービス、投資のすべての分野を挙げ、これらはすべてFTAの対象品目になる
と述べた。同交渉官は、中国はWTO加盟から5年が経過し、次のステップに進む時期とした上で、豪州は先進国
の中で最初の交渉相手であり、中国に良い実験結果をもたらすものと、交渉の早期進展に期待を込めた。

 中国側が農畜産物をFTA交渉の対象品目に掲げた背景には、豪州の農畜産物の輸出量が、中国側にとって比較
的予想しやすいことが挙げられる。一方、中国側としては、港湾や建設分野での中国人労働者の受け入れなど、サ
ービス分野の開放を要求している。2005年の豪州と中国との貿易統計では、豪州から中国への輸出額は前年比46%
増の160億ドル(1兆3,920億円)まで拡大し、国別では米国を抜いて日本に次ぐ第二位の取引相手になっている。



【シドニー駐在員 横田 徹 平成18年6月1日発】



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