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DA、「豪州の酪農乳業の現状と見通し」を発表(豪州)


酪農家は自信を回復

 デーリーオーストラリア(DA)は先ごろ、酪農家調査を含む「酪農乳業の現状と見通し」を発表した。

  これによると、豪州の酪農家は、2002/03年の大干ばつで大きな被害を被ったが、この2年間の国際乳製
品価格の上昇により、経営への自信を回復してきているとしている。しかし、酪農を廃業する者も多く、そ
の結果、豪州全体の乳牛飼養頭数が増加せず、生乳生産量は増加していない。今後も生乳生産の伸びはわず
かにとどまるものと見込まれている。概要は次のとおりである。


酪農家調査結果

○生乳生産量
  2005/06年度は、調査先酪農家の多くは乳牛の飼養頭数を増やし生乳生産量を増加させたが、廃業する酪
農家も多く、結果的に生乳生産量は伸びていない。2006/07年度も、肉牛価格が堅調に推移するため、と畜
に回る乳牛の数が多く、乳牛の飼養頭数はわずかに増加するのみと予測され、生乳生産量は前年度比1〜2
%増にとどまる見込みである。2005/06年度は1,000万キロリットル、2008/09年度は1,040万〜1,080万キロ
リットルの生乳生産量を見込んでいる。

○酪農家の将来展望
  将来を肯定的に捉えている酪農家の割合は、昨年は53%であったが、今年は61%に増加しており、また、
投資計画のある酪農家も大幅に増えており、酪農家の自信の回復がうかがえる。一方、酪農家の12%は、向
こう3年以内に農場を保有するが酪農経営をやめると答えている。

  廃業した酪農家のうち77%は現在も農場を所有し、54%は肉牛生産に転換している。

※現在の平均的酪農家像
  乳牛飼養頭数:242頭、土地:205ha、酪農専業率:酪農家の68%、人工授精利用率:酪農家の86%


2006年の酪農乳業界の動向

 2006年に入って、国際乳製品価格が軟化傾向にあるものの、引き続き高い水準を維持していることから、
豪州の酪農乳業界は、これにより利益を享受している。酪農家は、乳製品輸出価格の高騰や乳業会社の生
乳獲得競争により生乳価格が上昇したおかげで特恵的な利益を得ている。また、酪農家は、生乳生産量を
増やすよりも、経営改善による利益確保を重視するようになっている。

  乳業会社は、十分な乳処理能力の下、市場の状況に応じて有利な製品を製造する柔軟性を身につけてい
る。


国内市場の状況と見通し

  現在、豪州全体の生乳生産量の約50%が国内で消費されており、その4割が飲用向け、6割がチーズ、
デイリースプレッド、ヨーグルトなどの乳製品向けとなっている。

  豪州の小売業界は、スーパーマーケットが国内市場の生乳消費量の62%を扱っている。スーパーマーケ
ットは飲用乳を中心にプライベートブランドを推進し、伝統的な乳業会社のブランドと競っている。また、
消費者の生活様式の変化に伴い、外食などが増加しフードサービス業界が急成長してきている。全体とし
て、豪州国内での牛乳乳製品の販売額の増加は緩やかで、今後も年1〜2%の増加にとどまると見込まれ
る。


国際市場の現状と見通し

  上述のとおり2006年に入って、国際乳製品価格がやや軟化傾向にあるが、今後の世界の乳製品需要は、
主要な消費国の好調な経済情勢や新たな機能性乳製品の開発などにより、堅調に推移すると見ており、乳
製品市況も同様に堅調に推移すると見られる。今後は、中国やブラジル、アルゼンチン、ウクライナなど
の新興の酪農国家の出現によって、将来の貿易構造が大きな影響を受けると見ている。



【シドニー駐在員 井上 敦司 平成18年6月7日発】



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