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アルゼンチンとブラジル、セーフガードに係る議定書に合意


ブラジル産工業製品の流入が発端

 アルゼンチンとブラジルは2月1日、「競争力調整メカニズム(Mecanismo de Adaptacin 
Competitiva:MAC)」と呼ばれる、いわゆるセーフガードの発動が可能となる議定書をブエ
ノスアイレスで結んだ。

 実際には、アルゼンチンとブラジルが90年に結んだ「経済補完協定(Acuerdo de Complementacin 
Econmia:ACE*)14号に対する追加議定書」として署名されており、このACE14号自体は
2国間で共同市場を創設するためのもので、94年12月31日まではセーフガードに関する規定が
有効であったが、それ以降は失効している。よってメルコスル(南米南部共同市場)内の2カ
国間で当議定書が結ばれたことに、市場統合に向けた動きに反する貿易保護的な措置としてブ
ラジル産業界などからは批判されている。

 なおこの措置は近年、ブラジル産工業製品がアルゼンチンに多々流入し、産業界にダメージ
を与えかつ貿易摩擦を生んでいたことから、アルゼンチン政府がブラジル政府に対し、二国間
での是正措置を求めていたものであった。

 *:ACEはラテンアメリカ統合連合(ALADI)内における協定で、生産物の最大利用
   や経済補完の促進、競争条件の平等化、そして国際市場へのアクセスを容易にさせ加盟
   国間の平等で調和ある発展を促すことを目的に、実際にはメルコスルとアンデス共同体
   の国々を中心に自由貿易圏を形成するための協定となっている。



第一段階として民間部門での協議を実施

 実際の議定書の内容としては、まず第一段階として「民間部門間における協議」があり、「重
大な損害やまたはその脅威(以下「重大な損害など」とする)」があったとする輸入国側の生産
部門が、同国当局に議定書で定義された申請書を提出し、それを当局が15日以内に審査して、二
国間貿易監視委員会(以下「委員会」)に上申する事態が存在するか否かを判断した報告書を作
成する。もし重大な損害などの存在を肯定する場合は、その報告書を委員会に提出し民間部門間
で協議を実施することを要請する。要請された部門は、輸入増加による不利な影響を除去または
軽減する措置(例えば、“完全優遇となる輸入関税割当量”)を検討するため、30日間の期間が
与えられる(なお委員会の承認があれば最大90日間の延長が可能)。

 当事者間で合意に至り採用された措置は、最低1年間有効となり、また当事者間の合意によっ
て全面的または部分的に更新できることとなっている。

 なお、もし前述の期間内に当事者間で合意が得られない場合や採用された措置が履行されない
場合は、MACの手続きへと移る。



MACは民間合意の誘引を目的

 次に第二段階としてMACの発動がある。MAC発動に至るためには、輸入国側当局が重大な
損害などの有無について調査を開始することを官報で公布するなどのいろいろな手続きがあり、
また国内生産部門に対して重大な損害などがあったかを客観的な証拠により証明する必要がある。

 そして輸入国側当局は、官報公布から60〜120日以内に調査を完了することになっており(ただ
し特別な場合、最大30日の延長可能)、もし調査結果において、重大な損害などがあると判断し
た場合、委員会に通告し、国内側と輸出国側の生産部門および輸出国側当局の招へいを要請して、
“年間関税割当量”のレベルを協議する。なおこの場において民間部門間で協議がまとまれば、
MACの発動過程へと進まないが、合意できなければMACが発動されることになる。

 MACとしては、問題となっている製品に対し、@ “完全優遇となる年間関税割当量”を設
定し、A“年間関税割当量”の水準を超えた場合、メルコスル対外共通関税から10%削減された
関税が賦課される−ことになっている。継続期間は3年間で、終了後2年間は同じ製品に対して
再発動することはできない。

 以上のように、セーフガードを発動できる制度を二国間で導入したものの、第16条第1項に
「“年間関税割当量”の水準は、民間部門間の合意を促すものとする」とあるように、あくまで
民間部門の協議を優先させる姿勢を見せている。

 なお、ブラジル側の米生産者団体は、アルゼンチンなどから急増する米の輸入などについて、
本議定書の対象にしたい動きがあるようだ。



【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成18年3月1日発】 

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