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米農務長官、新たな農業政策の提案が急務


 ジョハンズ米農務長官は2月16日、ワシントンDCで開催された米国農業観測会議(Agricultural 
Outlook Forum 2006)において、近年の米国における農村経済構造の変化を受け、今次WTO農業交
渉の終了を待たずに、新農業法に向けた新たな農業政策の提案を行う必要性があるとした。
 
 同農務長官の演説の概要は、以下のとおり。


農村の経済構造変化の認識が重要
 
 今回のフォーラムは、米国の農業分野における変革を認識し、評価するための機会であるとともに、
今後、われわれが向かうべき方向を把握するための機会である。

 米国農務省(USDA)は、これまでにも約6カ月にわたり、農業者や牧場主から今後の農業政策
に関する意見を聞くため、全米52カ所で新農業法に関するフォーラムを開催してきた。当フォーラム
では、一様に農村開発計画のための支援に関する意見が出された。

 かつて農村経済へ多大な貢献をしていた農業経済の役割は、近年劇的に変化している。今日では、
現金収入全体の75%以上を農業から得ている農家世帯は約16万戸と、87年の約29万5千戸に比べると
約半数に減少している。また、それら16万戸の保有する農地面積は、米国の全農地面積のわずか3分
の1にすぎない。このことは、3分の2の農地を管理する生産者(全農業生産者の92%)は、収入源
の大半を農業以外の分野に依存していることを物語っている。

 最近、ファーム・ビューロー(全米最大の農業者団体、AFBF)が公表したレポートでも、「農
村共同体が農業者に依存している以上に、農業者は農村共同体に依存している」と述べられている。

 私はこれまで、2002年農業法は正当な政策であったと繰り返し述べてきたが、時代は変遷しており、
新農業法の詳細はまだ準備段階にあるものの、今後の政策は、このような米国の農村経済が直面して
いる変化を十分認識した上で、人々が農村の社会的地位および価値あるライフスタイルを選択可能と
なるよう、多くの経済機会を提供しなければならないものと考える。


新農業法に向けた農業政策の提案が先決

 新農業法は、今次WTO農業交渉における合意内容を盛り込むため、現行の2002年農業法を同交渉
が終了するまで延長すべきであるとの提案もある。しかし、私は、このような延長は、米国の農村社
会のためには間違った選択であると断言する。

 米国の農家の現金収入の27%を得ている貿易は、米国農業にとって重要な課題である。しかし、貿
易は、環境、エネルギー、研究などの重要な要素の一つにすぎず、農業政策の開発に当たり、WTO
農業交渉の結果を待つことや、新農業法を延期することは、今後10年間の農村における農業経済の成
長の基盤を築く機会を見過ごすことになるであろう。

 一方で、自分が述べた信念は、WTO農業交渉への熱意を減少させるものと理解されてはならない。
今次交渉が成功裏に終了することは、世界市場での公平な競争を可能とし、世界的にも、また、米国
全体および米国農業にとっても正当なことである。昨年10月、ブッシュ米大統領は、相互的な輸出補
助金の撤廃と市場アクセスの拡大を引き換えに、関税および貿易わい曲的な国内補助金の大幅な削減
と将来的な撤廃を提案した。当該提案は、今次交渉の推進の原動力となり、現在交渉相手国に対し米
国の野心に応じるよう求めているところである。


公平かつ正当なプログラムの提供が重要

  さらに、われわれは、いかに農村経済への支持を提供するかについて考えなければならない。現在
の農場支援構造については、だれが支持を享受すべきか、また、どのように提供されるべきか異論が
あり、活発な議論が行われている。

 現在の農場支持プログラムでは、全体の3%の農場がプログラム全体の30%の支持を受け取ってい
る。また、米国内の第一次産業における支持プログラムの92%が、5品目(トウモロコシ、大豆、小
麦、米、綿花)の農作物に偏っており、全農業者の3分の2は、最小限の支援のみしか受けていない
現状である。このような不公平感に対する懸念は明確であり、今後、貿易交渉への支持を得るために
も、当該問題については是正しなければならない。

 現在、USDAでは、これまで新農業法フォーラムで出された意見を集約しており、その作業が終
了次第、将来の農村経済発展のための適切な道筋を提案するため、WTO農業交渉の終了を待つこと
なく新たな農業政策を提案することとなる。


【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年3月1日発】




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