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台風被害により鶏肉輸入枠の拡大を検討(フィリピン)


台風により大きな被害発生

  9月下旬にフィリピンで発生した大型台風(台風15号)は、ルソン島を中心に大雨や洪水などによる大きな被
害をもたらした。マニラ首都圏を直撃した台風としては、ここ数年来で最大規模と言われており、死者、行方不
明者数は全国で合わせて200名以上、被災世帯数は20万世帯以上に上るほか、電柱や電線など送電施設が多大な
被害を受けたとされている。

  同国の農業が受けた被害も大きく、被害総額は約19億ペソ(約38億円、1ペソ=2円)と推定されており、ル
ソン島が生産量の約5割を占めるマンゴーをはじめ、養鶏と米、漁業などにも多大な被害が出たとされている。
ルソン島を中心とした地域は、同国における家きんなどの生産量のうち、ブロイラーは約7割、鶏卵は約6割、
アヒルが約5割を占める主産地となっている。これらのブロイラーなど家きん部門の被害額は、約2億5,000万
ペソ(約5億円)とされており、養鶏場を修復の上、出荷羽数などを被災前の水準に戻すまでには、数カ月の期
間が必要との見方も出ている。


鶏肉輸入枠の拡大を計画

  同国政府は台風被害によって生じる国内の鶏肉不足に対応するため、輸入業者に対し追加輸入を促すとともに、
鶏肉輸入枠については約3,000トンの拡大を検討しているとされている。同国政府によれば、この追加輸入は、鶏
肉の最需要期であるクリスマスシーズンに向けた対応であるとしており、輸入先は主に米国になるとみられる。
また、同国のブロイラー養鶏業者なども、鶏肉の輸入が短期間で終了するのであれば許容する方針とされている。

  同国における鶏肉消費量のうち、約97%前後は国産鶏肉が占めており、鶏肉消費量に輸入鶏肉が占める割合は
約2〜3%程度となっている。同国貿易産業省輸出促進局のデータによると、鶏肉の輸入については過去から実
施されているが、輸入量は非常に少なく96年までは数百トン単位で推移している。その後は増加傾向で推移して
おり、2003年までの輸入数量は毎年1万トン前後、2004年以降は2万トン台ベースで推移し、2004年の輸入量は
約2万1,000トン、2005年の輸入量は約2万6,000トンとなっている。今年の鶏肉輸入量については、1〜7月ま
での実績で前年同期比69%増の約1万6,000トンとなっており、輸入数量は前年同期より約7,000トン増加してい
る。


日本産家きんなどの輸入停止措置を解除

  また、同国政府は、9月12日付け農務長官通達(No.29)により、日本産家きん肉などの一時輸入停止措置を解
除した。日本では昨年6月以降、茨城県を中心に鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認されたことから、同国
政府は昨年9月に日本産の家きん、野鳥およびそれらの製品、初生ひな、卵および精液について一時輸入停止措
置を実施していた。

  同国政府によれば、日本政府によるAI感染鶏の殺処分や抗体陽性鶏の早期処理などのAI対策が4月21日に
すべて終了したことおよび日本政府が国際獣疫事務局(OIE)に提出した報告書などを確認の上、今回、日本
産家きん、野鳥およびそれらの製品など、昨年9月に一時輸入停止措置が採られた対象品目について同措置を解
除したとしている。なお、同国政府は同日付けでデンマーク産家きん肉などの一時輸入停止措置も解除している
ほか、8月にはイギリスおよびドイツ産家きん肉など、7月にはマレーシア産家きん肉などの一時輸入停止措置
も解除している。

  ちなみに、同国貿易産業省輸出促進局のデータによると、昨年のフィリピンにおける日本産鶏肉の輸入実績は
約30トンとなっており、2004年は実績なし、2003年は100キロ台となっている。



【シンガポール駐在員 林 義隆 平成18年11月2日発】



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