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チリ、青玉鶏卵で地域振興


小規模生産における技術革新を支援

 チリ原産で青玉の卵を産むアロウカナ種が、チリ農務省の管轄下にある農業投資財団(FIA)のパイロット
事業の主役となっている。

  FIAは今年度の家族農業者向け農業革新計画を21件承認したが、チリ南部におけるアロウカナ種の鶏卵生
産および販売振興計画はその一つであり、2年の計画実施期間内に5,800万ペソ(1,276万円:1ペソ=0.22円)
が融資される。
 
  家族農業者向け農業革新計画は、2004年に第1回が実施され、2006年は対象を全国に広げ、同時に融資の対
象とする部門も拡大している。融資対象の要件には、技術革新をテーマとし、小規模生産者が、生産・販売を
目的として行うことなどが定められ、具体的には@新製品の開発、A技術革新によって品質、生産性、収益性
の向上が図れること、B製品の生産や商品化で付加価値がつくこと、C製品の品質の特性により差別化が図れ
ること、D環境を破壊しない生産を行うこと、Eモデルとなる農業経営であること-などがテーマに挙げられ
ている。


青玉の卵を産むために最適な形質を選抜

 FIAのロドリゴ・ベガ理事によると、アロウカナ種の鶏卵を活用した計画への支援を決定した理由として、
生物多様性を守り、小規模生産者による生産の多様化を進展させ、品種の遺伝改良にも寄与すると説明してい
る。同計画はチリ南部教育技術振興センター(CETSUR)が中心となり、第8州および9州の生産者により
実施される。なお、CETSURの調査報告によると、1914年にカステロ博士によって紹介された青玉の卵を
産むアロウカナと呼ばれる鶏は、見つけることができなかったとされ、現在はヨーロッパ品種との交雑でその
形態上の形質は多様であるとしている。アロウカナ種の卵は白玉や赤玉といった普通卵と大きさは変わらない
が、殻は硬く、厚みもあり、卵殻の色は薄い水色からダークオリーブ色まである。

 今回の計画では、南部地域の小規模生産者が青玉の卵を産業的ではなく、小規模生産を維持し、環境に配慮
した生産を実施するだけでなく、アロウカナ種の中から産卵率が高く、青玉の卵を産むために最も適した育種
選抜を行うことも目的としている。

  これにより、アロウカナ種の飼養を開始する農家が増え、選抜された系統が確立され、これを活用する小規
模生産者のグループが拡大することを期待している。また、市場活動としては、環境に配慮した生産を行う小
規模生産者の手による南部地域の伝統・習慣に基づいた製品として評価されるニッチ市場での販売を目指す。


スローフードとしての地位確立を目指す

  さらに最終的には、同計画に参加する生産者の間で伝統的な生産システムに則り、食品の原産や手作りの品
質を保証し、産業化を避けるといった国際スローフード協会が推進しているスローフード(地産地消)活動に
よる認定食品として「青玉の卵」を作り出すことを期待している。同協会では独自の基準により、小規模生産
による希少で地域の活性化につながる各地方の伝統的・固有な食材を認定している。




【ブエノスアイレス駐在員 横打 友恵 平成18年11月15日発】 



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